第181話 松の葉に
池辺王の宴踊せし歌一首
松の葉に 月はゆつりぬ 黄葉の 過ぐれや君が 逢はぬ夜の多き
(巻4-623)
松の葉にあたる月の光が、その場所を移していく。
散り落ちる黄葉のように、貴方の心も私を通り過ぎ、見向きもしないようです。
お逢い出来ない夜が、多くなりました。
松の木の下で、愛しい貴方を待ち続けるけれど、動きを見せるのは月の光だけ。
夜が更けても、貴方は姿を見せない。
もはや、貴方の私に対する心は、黄葉のように散り、私を通り過ぎ、別の人に・・・
それゆえに、逢えない夜が多く重なっている。
池辺王は、大友皇子の孫。
宴踊歌は、宴会時に朗読される歌。
女性の立場で詠んでいるけれど、池辺王自身が詠んだのではなく、当時有名な歌を宴会時に池辺王が詠んだとの説が有力。
また、「松」と「待つ」の意味を込めている。
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