第179話山口女王 蘆辺より 満ち来る潮の

蘆辺より 満ち来る潮の いやましに 思へか君が 忘れかねつる

                         (巻4-617)


蘆辺から満ちて来る潮のように、ますます恋しく思うからでしょうか、あなたのことが忘れられません。


蘆辺から満ちて来る潮は、山口女王の胸の奥から湧き上って来る恋心。

その湧き上がり、胸を塞ぐような恋心は、溺れてしまうほどの苦しさ。


この歌は、後代の歌人の心を強くとらえたようだ。

三首の派生歌を列挙する。


下燃えに つのぐみわたる 葦辺より みちくる潮の 恋ひまさりつつ(藤原家隆)


夜な夜なは 身もうきぬべし 葦辺より みちくる潮の まさる思ひに(藤原定家)


いやましに ぬるる袖かな 葦辺より みちくる潮の からきうき世は(宗尊親王)

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