第170話笠女郎 皆人を 寝よとの鐘は 打つなれど

皆人を 寝よとの鐘は 打つなれど 君をし思へば 寝ねかてぬかも

                          (巻4-607)


全ての人に就寝の時を告げる鐘は打たれるけれど、貴方を恋する私は眠ることなどできません。


笠郎女郎の時代、朝廷の陰陽寮所属の時守が鐘を打ち、時を告げた。

就寝の時を告げる鐘は、亥の刻(午後10時頃)。


大伴家持の訪れを待ち続ける笠女郎にとっては、「寝なさい」と告げられても、寝ることなどはできない。

もしかして訪れるかもしれない家持に、寝ぼけた顔を見せないのは、恋する女のたしなみ。


ただ、こんな生活が続くと、不眠症にもなるだろう。

一途な笠女郎が哀しく思えて来る。

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