第168話笠女郎 剣太刀 身に取り添ふと

剣太刀 身に取り添ふと 夢に見つ 何の兆しも 君に逢はむため

                         (巻4-604)


剣の太刀を身に添えている夢を見ました。

これは、何らかの兆しなのでしょうか。

貴方にお逢いできるということなのでしょう。



「剣太刀」は、身に添ふの枕詞になるけれど、笠女郎は「剣太刀を身に添える」という夢を見た。

この場合の剣太刀は、大伴家持。

その大伴家持が自分に寄り添って寝てくれることの、前兆として判断したのだと思う。

もちろん、神前でのお告げではなく、あくまでも彼女自身の夢判断。

恋人と遠く離れている、近くに住んでいても逢うすべもなく、その人ゆえに嘆き恋う以外にない人にとって、すがるものは呪術。

そして、それによって、一喜一憂する以外にないのが、片思いの真実。

相聞歌には、様々な呪術が見られるけれど、夢判断も重要なものの一つだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る