第154話笠女郎 白鳥の飛羽山松の

白鳥の 飛羽山松の 待ちつつそ 我が恋ひわたる この月ごろを

                        (巻4-588)

※白鳥の:飛羽山にかかる枕詞。

※飛羽山:未詳。奈良東大寺北方の山、あるいは福井県鯖江市の鳥羽付近の山とする説などがある。

※「飛羽山松の」までが「待ち」を導く序詞。


白鳥の飛ぶ飛羽山の松のように、貴方のおいでを待ちつづけ、私はずっと慕いつづけているのです、この何か月も。


山を高々と飛ぶ白鳥を眺めつつ、愛しい人の訪れを待ち続ける。

それも何か月も、ずっと・・・


逢えない事情があったのだろうか。

遠隔地恋愛か、家持の心がはっきりとしないのか、あるいは家持にとっては戯れの恋だったのか。

白鳥を家持として見たのだろうか、あちこちの女性のところを飛びまわっている、だから、これほど長い月日、恋い慕い続けても、私のところには来ない。

これも、待つだけの女性の辛い気持ちが、白鳥と松という言葉を使い、美しく表現されている名歌と思う。



※派生歌

やすらひに 出でけむ方も しら鳥の とば山松の 音にのみぞ鳴く(藤原定家)


かすまずは 春ともえやは しら鳥の とば山松に 雪はふりつつ(大江頼重)

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