第138話都に戻る官僚へのはなむけの歌

五年戊辰、大宰少弐石川足人朝臣の遷任するに、筑前国の蘆城の駅家にして餞せる歌三首


天地の 神も助けよ 草枕 旅行く君が 家に至るまで

                         (巻4-549)

大船の 思ひ頼みし 君が去なば 我は恋ひなむ 直に逢ふまで

                         (巻4-540)

大和道の 島の浦廻に 寄する波 間もなけむ 我が恋ひまくは

                         (巻4-541)


神亀五年(728)、大宰少弐石川足人朝臣がその任を終えて、大和の都に帰るときに餞別に詠まれた三首の歌。


天の神も地の神もお助けください。旅路を行く貴方が無事に家に帰るまで。


頼りに思っていた貴方がいなくなってしまえば、私は恋焦がれることになるでしょう、直接お逢いするまでは。


大和までの道々に寄せる波のように、絶え間などありません。私の恋する思いは。




石川足人は、太宰小弐(太宰府の次官)、おそらく大伴旅人とともに大宰府に赴任してきた小野老の前任者で、旅人たちの赴任と入れ替えに奈良の都に戻ったとされている。

尚、この三首は詠み人知らず。

太宰府の女性が詠んだのか、あるいは同僚が詠んだのかは、わからない。

いずれにせよ、典型的、定番の送別の歌になっている。

おそらく送別会などがあって、儀礼として詠まれたのだと思う。




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