第130話 東国の女からの惜別の歌
藤原宇合大夫の遷任して京に上りし時に、常陸娘子の贈りし歌一首
庭に立つ 麻手刈り干し 布さらす 東女を 忘れたまふな
(巻4-521)
庭に生え立つ麻を刈って干し、布を干してさらす、この東国の女をお忘れにならないでください。
藤原宇合は、藤原不比等の第三子。
養老3年(719)に常陸守となった。
神亀元年(724)に帰京となった。
麻を栽培して刈って干し、さらに布に織りさらすという一連の作業は、女性が主にする作業であり、この一首は常陸の国の布さらしの民謡(労働歌)らしい。
そのため、藤原宇合の現地妻が詠んだ歌であったのかは、疑問が残るけれど、この歌を知った都人としては、おそらくこんな風に意味を感じたのではなかったのだろうか。
「私たちは自分たちで織った麻衣を着るがせいぜい、貴方は京に戻って、絹を来た女に囲まれるのですね、でも、こんな東国の女でも、忘れないでください」
東国の女の純情の歌なのか、あるいは単なる麻布さらしの民謡(労働歌)なのか、どの説を取るのかは、自由でかまわないと思う。
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