第114話柿本人麻呂 百重にも

百重にも 来しかぬかもと 思へかも 君が使ひの 見れど飽かざむ

                         (巻4-499)


何度でも来て欲しいと思うからなのでしょうか。

貴方からのお使いも、何度見ても見飽きることもないでしょう。


この歌は、柿本人麻呂が女性の立場で詠んだ歌。


前回までの、三首

み熊野の 浦の浜木綿 百重なす 心は思へど ただに逢はぬかも

                        (巻4-496)

古に ありけむ人も 我がごとか 妹に恋ひつつ 寝ねかてなずけむ

                        (巻4-497)

今のみの わざにはあらず 古の 人そまさりて 音にさへ泣きし

                        (巻4-497)

に対しての、女性の立場での応答とも言われている。


人麻呂に思われた女性としては、


人麻呂さま、ご心配はいりませんよ。

貴方には何度でも来て欲しいのです。

だからお使いであっても、見飽きることなどないのです。


女性の方でも、人麻呂を慕っている。

いつでも来て欲しいと思っている。

なかなか逢えないことを苦にしている人麻呂を、母性のように、大らかに包んでいる。


これも、男が望む理想の女性なのかもしれない。

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