第113話柿本人麻呂 今のみの
今のみの わざにはあらず 古の 人そまさりて 音にさへ泣きし
(巻4-497)
愛しい人を思うのは、今の世の人に限ったことではない。
過去の世の人は、素直に、声をより大きくあげて泣いたのだ。
かなわぬ恋なのだろうか、こんな苦しい想いは、私が初めてなのだろうか。
いや、昔の人の方が、より大きく声を出してまで泣いたと言われている。
自分と同じ苦しさを過去の世の人に求めて、「もっと声をあげて泣いた人もいる」と、自らを慰めようとする。
しかし、それで、本当に慰められるのだろうか。
単純にとらえれば、昔の人も泣いた、それも声をあげてまで。
だから今の世に生きる自分だけが苦しいわけではないとの意味になるけれど、それでは浅いような気がする。
自分の気持ちに素直に、人目をはばからず、声を出して泣けるのは、まだましなのではないか。
むしろ、泣く声も出せない秘めた恋、秘め続けるしかない恋のほうが辛い。
普通に詠んでいるようで、人麻呂氏のより深い意味が、「古の 人そまさりて」に込められているような気がしてならない。
なかなか、上手くは表現が難しいけれど。
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