第107話 山の端に

反歌二首


・山の端に あぢ群さわき 行くなれど 我はさぶしゑ 君にしあれば

                            (巻4-486)

山の端で、あぢ鴨の群れが騒ぐように、人が騒いで行くけれど、私は寂しくて仕方がないのです。貴方がいないので。


※さぶしゑの「ゑ」は、辛さや苦しさに耐えかねて発する助詞。



・近江路の 鳥籠の山なる 不知哉川いさやかわ 日のころごろは 恋ひつつもあらむ

(巻4-487)

近江路の鳥籠の山に流れるいさや川、その名前の通り、この先は不安でならないけれど、貴方を恋い慕いながら生き続けようと思うのです。


※いさ:どうなることやらわからない


愛する人が遠くにいて、また来てくれるかどうか、全く不明。山の端で、あぢ鴨の群れのように、人が騒いで行くけれど、私は寂しくて仕方がないのです。貴方がいないので。


誰が大騒ぎしようが、私には関係ない。

貴方が、私の前にいないのが、寂しくて仕方がない。

素直な人待ち歌で、好きな歌である。


※作者は崗本天皇となっているけれど、高市崗本宮(舒明天皇)なのか、後崗本宮(皇極、斉明天皇)であるのか、明確ではない。

推定では、後崗本宮の皇極(斉明)天皇となっている。



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