第106話 崗本天皇の御製一首

崗本天皇の御製一首


神代より 生れ継ぎ来れば 人多に 国には満ちて

あぢ群の 去来は行けど わが恋ふる 君にしあらねば

昼は 日の暮るるまで 夜は 夜の明くる極み

思ひつつ 眠も寝がてにと 明しつらくも 長きこの夜を

                     (巻4-485)


神代から、人は生まれ続けて来たので、人は多く、国に満ちています。

あじ鴨の群れのように、頻繁に行き来をしているけれど、

私の恋ている貴方ではないので、

昼は暮れるまで、夜は夜明け間際まで、

貴方を思い続けて、眠ることなどできなくて、

この長い夜を明かしてしまいました。


※崗本天皇:推定では皇極天皇(重祚後は斉明天皇)。


どれだけ人が多かろうと、私が恋する人は、貴方だけ。

貴方がいなければ、夜も昼もなく、苦しいだけ、眠ることさえできない。

何とも、素直な繊細な恋を歌っていることだろうか。

真摯に恋を歌っているので、わかりやすい。

そのまま、歌謡曲にも使えそうなほどに思う。


詠み人は1300年以上前に亡くなっているけれど、歌と、歌に込められた心は、まだ生きている。


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