第105話 一日こそ人も待ちよき

難波天皇の妹の、大和に在りし皇兄に奉上せし御歌一首


一日ひとひこそ 人も待ちよき 長き日を かくのみ待たば ありかつましじ

                          (巻4-484)


一日だけでしたら、待つことはできます。

しかし、長い間となると、こんな苦しい思いのままで待つことになり、とても生きてはいられません。


※難波天皇:難波を都にした時期の天皇。仁徳天皇の可能性がある。

 仁徳天皇であるならば、その妹は異母妹の八田皇女。仁徳天皇の磐姫皇后とは深刻な三角関係だったようだ。磐姫皇后も、八田皇女に激しく嫉妬したという伝承もある。


普通に読めば、愛する人に早く帰ってきて欲しいというだけの素朴な歌になるけれど、それに三角関係やら強烈な嫉妬が入り込んでいると読むと、全く様子が異なって来る。


一夫多妻の時代であったにしても、男の愛情は独占したいと思う、あの女には負けたくない、取られたくない。

一日ぐらいは我慢するけれど、長い間、取られたままでは、辛くて仕方がないから、早く私のもとに戻ってきて欲しい、そんな強い想いが込められた歌だと思う。



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