第26話 大伯皇女は亡くなった大津皇子を悲しむ(2)
大津皇子の屍を葛城の二上山に移し葬りし時に、大来皇女の哀傷して御作りしたまひし歌二首。
うつそみの 人なる我や 明日よりは 二上山を
(巻2-165)
磯の上に 生ふるあしびを 手折らめど 見すべき君が ありといはなくに
(巻2-166)
大津皇子の遺体を葛城の二上山に移葬した時に大来(大伯)皇女が悲しんで作られた歌二首。
この世の人である私は、明日から、二上山を弟として眺めることになるのでしょうか。
岩のほとりに生えている馬酔木を手折りたいと思ったけれど、見せたいと思う貴方もこの世にはいないのに
※二上山は葛城山系の北端、河内と大和の国境に位置し、雄岳、雌岳の二峰を持つ。その雄岳の山頂に大津皇子の墓と伝えられ墳墓がある。
尚、大津皇子の処刑地は大和の香具山の北東、訳語田の宮。そこから二上山に移葬されたらしい。
尚、大津皇子の遺体は、「屍」という字があてられている。
行き倒れや、罪死の人に用いる字である。
伊勢の斎宮を離任し、都に戻ったものの、ただ一人残された皇女は、あの世に行ってしまった、それも罪人として殺された愛する弟への想いを、墓所である遠くの山の二上山を眺めることでしか、果たせない。
二首目は、大津皇子亡き後の翌春、馬酔木の花が咲く頃の時期。
皇女は、馬酔木の花を手折って、皇子の墓所に向かって手向けたのだと思う。
この世とあの世の断絶を実感し、再び深い悲しみに心を傷めたのだと思う。
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