第23話 柿本人麻呂 石見相聞歌(4)
反歌二首
青駒が
(巻2-136)
秋山に 落つる
(巻2-137)
柿本朝臣人麻呂の妻
な思ひと 君は言へども 逢はむ時 いつと知りてか 我が恋ひざらむ
(巻2-140)
反歌二首
青駒の歩みが速いので、雲のかなたはるか遠く 妻の家のあたりを過ぎて来てしまった。
秋山に落ちていく黄葉よ しばらくの間は 散り乱れないで欲しい。
妻の家のあたりを見たいから。
柿本朝臣人麻呂の
思い悩まなくていいと あなたは言うけれど いつ再び逢えるかわからないので 私は恋せずにはいられないのです。
妻と別れて都への道も進んでいる。
そのため、当然、妻の家など、全く見えない。
それでも遠ざかっても妻への想いは消えない。
黄葉に散るな、妻の家が見たいとまで頼む。
実際に見える、見えないではない。
わかっていながら、それを言いたい人麻呂の心は、まだまだ揺れている。
石見に残された
柿本朝臣人麻呂そして
それだから、より素直に人の心に響くのだと思う。
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