第17話 弓削皇子の、紀皇女を思ひし御歌四首
・吉野川 行く瀬の早み しましくも 淀むことなく ありこせぬかも
(巻2-119)
・我妹子に 恋ひつつあらば 秋萩の 咲きて 散りぬる花に あらましを
(巻2-120)
・夕さらば 潮満ち来なむ 住吉の 浅鹿の浦に 玉藻刈りてな
(巻2-121)
・大船の 泊つる泊まりの たゆたひに 物思ひ痩せぬ 人の児ゆゑに
(巻2-122)
※弓削皇子と紀皇女は共に天武天皇の子で兄妹。
この時代は母親が違う兄妹の恋は禁忌ではない。
紀皇女は軽皇子(後の文武天皇)の正妃との説がある。
それが事実ならば、不倫にして大罪。
・吉野川の早瀬のように、二人の関係も ずっと滞らなくあって欲しい
・あなたに恋し続けているだけならば、秋萩のように、咲いてすぐに散る花のほうが、ましなのです。
・夕方になれば、もう潮が満ちてきてしまうから、今のうちに住吉の浅鹿の浦で藻を刈ってしまおう。
(支障が発生する前に、結婚したい:藻を刈るは契る:結婚の意味)
・大きな船が停まっている港の光景のように、揺れ動きためらい、物思いに痩せてしまった。あの人のせいで。(たゆたひは、人目を気にして会うことをためらうこと)
弓削皇子の夭折が、紀皇女との不倫による処刑だったとの説もあるけれど、文献においては残っていない。
鍵としては、紀皇女の記録が、珍しく残っていないこと。
それを考慮するならば、おそら天皇の妻への不倫関係。
命をかけた恋だったのだろうか。
特に二首目の「秋萩の 咲きて 散りぬる花に あらましを」の、「こんなに苦しい思いを続けるなら、すぐに散ってしまう秋荻の花になりたい」に注目し、弓削皇子自ら死を予感していたという説もある。
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