NYPD-KEYS

@voidkeys

第1話 非番

街中はクリスマスの空気一色で平日に関わらずごった返していた。


車はさっきから全然進む気配がない。


周りを見回すとイライラしてタバコを吸い散らかしている白人の老練ドライバー、陽気にラップを口ずさむ黒人タクシードライバー、その間をすり抜けるコートをまとったOL、抱えきれないプレゼントを抱えたお母さんとその子供。


毎年毎年分かっているのについつい忘れて、メインストリートの交差点を通過している気がしている。


あまりに進まないもんだから、結局クソつまらないラジオを聴くか。それともEメールをチェックするか。


正直、どの曲もクリスマスソングしか流れてないんだ。それが暇つぶしになるわけがなかった。


俺はおもむろに助手席に置いてあったCOMKを取り上げメールソフトを立ち上げた。


最近替えたてのスイッチは調子がいい、仕事が捗る気がする。いつまでも骨董品を使わせるなと久々に怒ったふりをしたのが効いたのかもしれない。

ジェイクが渋々NYPD内では使っているやつがほとんどいないものに交換してくれた。といってもその時そのスイッチしか余っていなかったってことかもしれないが。


メールは古い順から受信されていくのだが、先ほど5分くらい前に受信されたメールがあった。


件名を見る限り開きたくはなかった。

今日は非番って知ってるはずなんだが…


それは相棒からのメールだった。


“緊急自体発生”


今月入って何回目の緊急事態なんだ。

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