四歌 魔女に捧ぐ

 時重ね 碧き常葉の 待つ人と 


 心重ねて 挑まんと 遠き行く手を 尋ね来て 


 人も寄らぬと 聞く山の 麓に着きて 


 見上げれば 夕べも過ぎし 墨染の 黄昏空たそがれそらに 


 赤き火の 燃ゆるが如く 揺らめきて 


 空を高行く 風に乗る 火の粉の如く 流れ行く 


 山に臨みし 岩囲う 珠の光に 誘われて 

 

 踏み入れし道 薄紅の 秋の山にも 其処此処に 


 見ゆる紅葉の たたなづく 幾重に茂る 


 梓弓あずさゆみ 音聞く我も 前知らぬ 


 溢れし炎 火の泉 


 君が備えし 力添え いくさの姿 雄々しくも 


 我友合わせ 勇駒いさみごま 猛る心に 


 武士もののふの 八十に重ねて 攻め立てる 


 幾時経ちて 夕月夜ゆふづくよ 暁闇あかときやみに 隠れども 


 大空渡る 日の影も うつろい惑い 照る月の 光も見えず 


 永久とこしへの 人持つ罪を 抱きつつ 


 永遠とわの償い 背負う如 哀しき姿 


 神奈備かむなびと 祈り捧げん 火の山の魔女 

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