三歌 夢追い

 風誘う 青葉の枝の 連なりに ささやく鳥の 声聞かば 


 踏みし旅路を 振返る 我を導く 往手ゆくてにも 


 霞かかりて 先見えず 夢を求めて 彷徨えど 


 何処と知れず 夏草の 想いしなえて 踏み惑う 


 山路踏み越え 朝霧の 迷いし道に 灯火あかり取り 


 我の捉えし 言の葉は 日の影揺れて 柔らかき 春の陽溜 


 陽炎かぎろひの 燃ゆる荒野を 我は行く 


 啓けし道を 我辿る 果てなし時に 


 草枕 旅路のとまり 途次みちすがら 


 一里の塚を 捉えども 夢の姿は 


 露のごと あしたに置きて 夕べには そらに溶け行く 


 霧のごと 夕べに立ちて あしたには 風と去り行く 


 人伝ひとづてに 聞けども在りし こともなく 


 時を重ねて 待ち侘びる 


 捉えるべきと 言ふ森の 恵み求めて 来つれども 


 蔓巻く樹々も 草花も 落つる泉の 流れさえ 


 夢を覚えし はずもなく 後を辿れど 


 葉も幹も 何処も夢の 跡も無し 


 木々の狭間に 木霊する 葉擦れの音に 振り向けど 


 姿の見ゆる 故もなく 想い起せし 人の世の 


 かしまし姿 嘲笑う 永遠の命の 神々の 


 思うがままの たなごころ 


 淡き運命さだめの 蜉蝣カゲロウの 消え行く如く 


 限りある 道の中半なかばと 知りつつも 


 我は求めん 人の身の夢 

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