エピローグ

最終話 終わりと始まりの戦い

◼️


「……これでいいのか?」


「ええ。これで勇者としての資格は得たわ」


 アリスは、真っ直ぐ俺を見る。

 勇者は・・・死なない・・・・。それは勇者が魔王を倒すために課せられた使命。ルシフェルが循環を作り上げたその時に掛けた呪い。ルシフェル本人でさえ、解かなかった。と、言うのも解呪を行うには、呪いを掛けたそれ以上の力が必要となる。俺たちとの決戦に備えて、あえて放置していたのだろう。


「俺が本当に出来るのか?」


「ウルしかいない」


 即答だった。

 それはその言葉だけではなく、この場にいる全員の眼差しから伝わっていた。


「……じゃあやるぞ」


 それは、俺が勇者であった頃に出来なかった魔法の一つ。……ルシフェルに与えられた光の力のみでどうにかしようとしていたんだから、出来なくて当然だったのだが。


 光で出来た扉が煌めく。


 それは、呪いを解くわけではない。

 勇者は死なないと言ったが、寿命では死ぬ。役目を終えた勇者も通常の人のように死ぬ。だからその呪いは解かない。だが、・・・それ以外で・・・・・死んだ場合は・・・・・・光の奇跡に・・・・・よって・・・蘇らせること・・・・・・が出来る・・・・


 俺は左手を前に突き出した。


【女神よ】


 煌めく風が足元から舞い上がった。


【その奇跡を此処に】


 そして数多の光の粒がその形を創り上げる。

 よく見覚えのある輪郭。兜に、鎧。……いつまで身に付けてるんだよ。


「……おかえり」


「ただいま」


「お前、それいつまで身に付けているつもりだ?」


「……それもそうだな」


 それもルシフェルが掛けた呪いの一つ。人の身でありながら魔王とするため、鎧をその身と同化させた。……いや、待てよ? 俺は魔王だが人の外見をしているぞ? 鎧を着込ませる理由が有ったのか?


 がしゃり、がしゃりと重量感のある音を立てて鎧が外れていく。そしてルシフは、その最後に兜を外したのだった。


「……なるほど、悪くねえ」


「息苦しさは、なくなったな」


「じゃあ、よろしく頼むぞ? ……国王様」


 俺が手を差し出したことと、この周囲の状況を見て合点が行ったのだろう。少しばかり戸惑った表情をしていたが、それは微笑みに変わった。


「……ああ、よろしく頼む、魔王よ」


 歓声が上がった。

 俺たちのやり取りを固唾を呑んで、見守っていたのだろう。……王座の間にずらりと並ぶ数多の戦士たち。そこに人も魔物も種族も関係なかった。

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Uru's Capriccio -勇者と魔王は手を組むことにしました- 悠希希 @yukis777

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