第二十六話 月は死す
26-1 述懐
夥しくこの世に生まれ落ちる神よ。時として葡萄の実のように、柘榴の実のように、房を成し、群れを成して生み落とされし神々よ。
汝らはさながら果樹の如く生まれ、愛でられ、崇められる。伸びすぎた枝葉は丁寧に刈り取られ、その果実は称賛を以って味わいつくされる。しかし、いつしかその枝を揺すぶる手はいなくなる。果実は地に落ちる。豊穣の土の上であれ、乾いた砂の上であれ、熟しすぎた果実は不様に潰れ、果汁は飛び散り、果肉は毒々しくも崩れていく。
聞け、信仰を失った
――だが、篝火よ、否、九尾の狐よ。お前だけは腐肉でなく、果実そのものであった。それもまだ枝に成る果実だ。お前が天空に浮かんだとき、お前を注視した多くの目によって、お前を畏れた多くの心によって、果実は熟したのだ。私はこの時を待っていた。ずっと待っていた。
篝火よ、お前の果肉は私を潤した。今宵、私は再び紅き月を負おう。
「ようやくお帰りですか、姫」
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