第18話 友達を作ろう

「うーん……」



 と唸って目を瞑り、顎に手を当て考え込む少女。そんな少女ことルクミラルシェンをほっといて、さっさと未探索の他の階へと赴きたい。


 だけど、差し足忍び足で傍を通ろうとしたところでガシリと腕を掴まれて逃走を阻止されてしまった。だから仕方なく、ルクミラルシェンの答えを待つしかない状況……。


 ルクミラルシェンの膂力はわたしと比べれば大して強くはない。振りほどこうと思えば簡単に解けるだろう。


 でもそうしてしまえば彼女に怪我を負わせることなるかもしれない。そういうのもあって待つしかなかった。



 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 「分かったわ!」



 そう声が上がったのは待ちくたびれて眠気が襲ってきた頃合いだった。うんざり顔のわたしとは対照的にルクミラルシェンは嬉しそうに言葉を紡ぐ。



 「素材を自分で採りに行くためなのね! どう、合ってるかしら?」


 「正解で――――」


 「こんなところにいたのか!」



 わたしの言葉を遮って聞き覚えの無い男の声が遠くから飛んできた。



 「お父様!」



 そう叫ぶや否や、ルクミラルシェンはわたしの腕から手を放し、その男の下へと駆け寄っていく。品のある綺麗な身なりの男は抱き着くルクミラルシェンの頭を優しく撫でる。その光景が不思議と羨ましく感じたのは何故だろう・・・。


 その男は撫でるのをほどほどに止めるとわたしのほうへと顔を向けた。



 「ルミル、あのは誰だい?」


 「あの娘はアスピっていうの! さっき知り合って友達になったのよ!」


 「そうだったのか」



 友達とは知らないうちに自ずとできるものなのかもしれない――――そんな哲学的なこと(?)を考えていると男は納得気に少女へと言葉を返し、その手を繋いでこちらへと歩み寄ってきた。



 「我がが世話になったね。私はヴィンニネルという者だ」


 「えっと…アスピです」


 「どうやら娘が迷惑を掛けたようですまなかった」


 「いえいえ……」



 子は親に似るなんてことわざが本には書かれていたけれど、現実では必ずしもそうとは限らないのだとわたしは悟った。



 「おやおや、私と娘があまりにも違いすぎて驚いているのかい?」


 「少しだけ……」


 「そう遠慮しなくても良い。実際、我が娘は妻に似てお転婆で好奇心旺盛でたまに暴走する悪癖があるんだ。それがまた可愛いのだが、他所様からすればたまったものじゃないだろう。どうせまた何かやらかしたに決まってる。何かされなかったかい?」


 「えっと大したことはされてないです……たぶん」


 「お父様、ひどいです! たまには信用してくださいってば!」


 「あはは、それは無理な話だね」



 朗らかに笑うヴィンニネルさんは宥めるようにルクミラルシェンの頭をぽんぽん叩く。それを受けて頬を更に膨らませるルクミラルシェンは無理やり父親の手を除けるとわたしの下へとすたすたと寄ってきた。


 そしてわたしの手を取るや否や楽しそうに言葉を紡いだ。



 「せっかく友達になったのですし一緒にお食事でもしましょうよ!」


 「こら、ダメだよ。相手のことを考えて行動しなさいっていつも言っているじゃないか」


 「ごめんなさい……」


 「わかればよろしい。で、どうだい? 君の都合がよければだけど我が娘の招待を受けてはくれないかい?」



 こうしてわたしは食事の招待を受けることとなった――――

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森暮らしの錬金術師、外の世界で無双する 卵崖御飯 @Exactly-N

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