第2話 カキピーとオマンピー

言葉の語尾に『ピー』が付くと、なぜ卑猥に聞こえてしまうかは人類最大の謎かもしれない……


ということで。俺は今、『カキピー』を食べて酒を飲んでいる。

安くてうまい焼酎、『いいちこ』のウーロン割りというシンプルな酒によく合うツマミ。『いいチンコ』ではないぞ。『いいちこ』だぞ。


人によってはそれぞれ意見があるかもしれないが、こればっかりはゆずれない。ゆずれない願いなのだ。ベストオブ安酒のツマミは、カキピーの満場一致で異論はないだろう。 


今日も今日とて、嫁の機嫌は悪い。

俺と会話をかわすことはもちろん目も合わさないし、俺の半径3メートル以内は近寄らないし避けている。まるで、『裂けるチーズ』以上に避けている。避けているし裂けられている。避ける、避けラー、避けリストの3段活用だ。でもそれでいい。俺に干渉しなければ、それもまた安心で平和な暮らしと言えなくもないだろう。


俺は、パソコンのキーボードを弾きながら、右側面に置かれた紙皿に盛ったそれに手を伸ばす。それが『カキピー』である。もちろん紙皿にはティッシュを敷いて、紙皿を何度も使えるリサイクル状態にするのは忘れてはいない。一度、紙皿に盛っただけで捨ててしまうのはエコロジーに反する。紙皿を大事に使うことは子供の教育にも良いことなのだ。


まぁ、誰しも酒に酔っぱらえばエコロジーなんてクソ食らえと思う人が大半かもしれないが、そんなことはどうでもいい。今、俺は間違いなく、純粋に生粋に『カキピー』を味わっているのだから。ああ……このスナッキーでボリボリッとした食感のおかきと、ほんのわずかな辛さのスパイシー感。そして若干の塩味にて味付けされたピーナッツとのワルツが、アンドゥトロワクワトロゥ!と踊りださんばかりのバレリーナとのハーモニーとユーモアとジャイアントモアとドードー鳥との競演を夢見る学者のシャイな恋愛事情と似ている感じがしないでもないだろう。科学者はシャイな人が多いのだ。


『おかき』と『ピーナッツ』だから『カキピー』なのかどうか名称の意味は知らないが、おそらく正解なのだろう。これがまさか、センズリの『カキ』とオマンコの『ピー』だったならば、間違いなく問題になる商品名になっただろう。誰しもが単純明快に考え付くネーミングこそ、安心安全をアッピール出来る商品名なのだと、ほとほと感心する次第だ。余談だが、『○○ピー』という卑猥なネーミングから連想するのは、『のりピー』だったり、『オマンピー』だったりするのは、人類共通の言語認識力によるもだと思って間違いないだろう。


さて。ボリボリとカキピーをつまんでいると、そこにひとつの問題が発生するのをご存知だろうか?


そう、それは奥歯に詰まったカスだ。奥歯だけでもなく、そこらじゅうの歯につまる。つまる、つまる。とにかくつまる。つまる、つまラー、つまレストの三段活用なのだ。虫歯が一本もない俺ですらつまりまくるのに、虫歯だらけのダーティーな40代にはかなり高難易度のスナックバトルなのだ。もし、万が一、差し歯がとれてしまい、それを飲み込んでしまったらという恐怖と隣り合わせな危険な情事なのだ。と、山本譲二と所ジョージとジョージ秋山が言ったとか言わなかったとか、定かではないが、ゴンズイとパットマスターXは好きだった。そんな少年時代の俺にひとこと言いたい。『無理して結婚しなくていいよ』……と。


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