神隠し

水瀬 由良

神隠し

 マンションの一室で山本秀人は寝転がりながら、金色に輝くモノを手に持ち、じっくりと見る。


「本物だよなぁ」


 秀人がこの小判を手にしたのは半年前。

 部屋の一角に歪みが生じ、ちょんまげ姿の男が表れた。


 男は驚きながらも、秀人にいろいろと聞き、最後にあるものを譲って欲しいと願い出、その代わりにと小判を差し出した。


 秀人も驚いたが、それは高価ではないので、小判と交換した。


 このマンションは『神隠しの森』を切り開いて建てられたらしい。

「不思議な話だ」

 秀人はそう思った。




 ……17××年。

 見世物小屋の前に行列ができている。

「今日も大繁盛だ」

 幕府が立入禁止にしている森に男は迷いこんだ。神隠しに遭うと評判の森。そこで、男は確かに妙なところに出て、驚くべきものを見て、一両をはりこんだ。

 それは一瞬で光り、消すのも自由。


 懐中電灯だった。


 一両が何倍になったか分からない。

「こんな神隠しなら大歓迎だ」

 男は笑った。

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神隠し 水瀬 由良 @styraco

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