ぱたぱた
安良巻祐介
ぱたぱたと呼ばれる珍しい生き物がこの辺に出ると聞いて、大虫取網と鳥食篭を持ってやってきた。
名前からして羽のあること、さほど大きくないことなどが容易に伺い知れる。
とすれば、大型の虫や小型の鳥を捕らえる時の工夫で事足りよう。
そう考えて、畦道をくだんの辻まで来たところ、はたしてぱたぱた、ぱたぱたと音がする。
珍獣めどこにおるかと目玉をぐるり、見回してみれば、視界の端にちらりと映ったものがある。
すわ、見つけたり、と網を構えたまでは良いが、そこにいたものの姿を見たとたん、喉からアッと声が出て、固まってしまった。
ぱたぱた、ぱたぱたと音を立ててそこらを走り回っていたのは、箒を携えた──小さな小さな婆さんだったのである。
ぱたぱた 安良巻祐介 @aramaki88
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