第60話 聖女様の行方


 1




 ドグマに忠告を受けたトキが医療室に戻ると、室内に残していたアデルは大人しくその場に丸まって寝こけていた。戻って来たトキに気が付いた彼はぱちりと目を覚まし、ふりふりと嬉しそうに尻尾を振ってトキの元へと駆け寄って来る。油断すると顔を舐め回されてしまうため、トキは適度にアデルに構いつつ軽くあしらい、簡素なベッドへとその身を投げたのだった。


 そうして一晩が明け、修道院に響き渡る鐘の音でトキは再び目を覚ます。むくりと体を起こせば、やはり目の前にはアデルの姿があった。



「……お前、いつまで俺に引っ付いてんだよ。ご主人様のとこに戻らないのか」



 呆れたようにアデルに問うが、彼は「アゥン……」と小さく鳴くばかりだった。どこか覇気のないように感じるアデルの様子にトキは眉を顰めたが、魔物の考えている事など彼には理解出来ない。



「……まあいい。俺はシャワーでも浴びて来るから、お前はセシリアんとこに戻れ。じゃあな」



 トキは溜息混じりに吐きこぼして立ち上がる。すると丁度ノックの音が響き、医療室にはハンナが入って来た。



「……ああ、おはようございます。お早いお目覚めですね」


「……アンタか。何の用だ」


「トキ様が元々着ておられたお召し物をお持ち致しました。随分と汚れておりましたので、勝手ながら洗濯させて頂きましたが……ご容赦くださいませ」


「……フン」



 ハンナの手には、見慣れたトキの衣服の一式が丁寧に畳まれて揃っていた。トキはひったくるようにそれを奪い、彼女に背を向けて扉を開ける。


 ちらりとアデルを一瞥すると、やはりどこか覇気のない様子で部屋の中をうろうろと彷徨っていた。なぜセシリアの元へ戻ろうとしないのかと訝りつつも、トキは医療室を後にする。


 ぱたん、と扉がしまって、彼はシャワールームに向かって歩き始めた。




 2




(……やっぱ、こっちの方が落ち着くな)



 シャワールームで汚れた身体を流し終え、普段着ているインナーに袖を通した彼はしっくり来る着心地に小さく息をついた。上等な洗剤で洗われたのか香りが若干甘ったるくて鼻につくのは気に入らないが、血痕や泥で変色していた部分の汚れは綺麗に落ちている。

 黒いズボンの上から腰巻を装着し、藍色のストールを巻いて彼はシャワールームを出た。元々彼が身につけていた物は大方戻って来たようで、残りは武器だけか、と未だに行方の知れない愛用の短剣ダガーを思い浮かべる。──紫色の宝石が埋め込まれた、“師”の短剣を。



(……あんなもんに、何執着してんだか、俺は)



 無意識に溜息が溢れてしまう。藍色のストールをたなびかせ、金の髪を揺らし、いつも冷たい瞳をしていた“彼”の顔をつい思い出してしまった。ディラシナの街に流れ着いたトキを拾った、盗賊の男の顔を。


 彼──マドックは、いつも不機嫌そうで、にこりとも笑わない、口数の少ない男だった。ディラシナ近辺の川沿いで気を失っていたトキを拾い、あの掃き溜めのような街に連れ帰った男がマドックである。


 彼と交わした最初の会話は、未だにトキの記憶の中に痛烈に残っていた。



『──ここで死んだように生きるか、俺に殺されるか選べ』



 マドックは開口一番にそう言って、まだ子どもだったトキに短剣を突き付けたのだ。──紫色の宝石が埋め込まれた、あの短剣を。



(チッ、無駄な事思い出しちまったな……)



 トキは小さくかぶりを振り、舌を打って目を伏せる。思い描いたマドックの瞳は常に冷たく、最後の別れも実に呆気ない物だった。

 愛用していた短剣とストール、それからドグマ──つまり〈魔女の遺品グラン・マグリア〉を残して、彼はある日忽然とその姿を消してしまったのだ。


 あれからもう七年。

 彼の消息は、未だに途絶えたままである。



(……もう、どうでもいいだろ……あんな奴……)



 ぎり、と奥歯を噛み締め、脳裏に浮かんでいたマドックの背中をトキは頭の中から消し去った。──すると不意に、彼の視界には一輪の白い花が映り込む。



「……?」



 トキは足を止め、通路の真ん中でぽつんと置き去りにされたそれを拾い上げた。



「……ローゼリア?」



 手に取ったそれは、“ローゼリア”と呼ばれる観賞用に植えられる事の多い白い花だった。見た目が美しく香りも上品な花だが、その花弁には睡眠作用のある毒があり、誤って口に含むとたちまち強い睡魔に襲われて眠ってしまうと言われている。一度に大量摂取すれば、二度と目を醒まさないとも。



(……何でこんなもんがここに落ちてるんだ……? しかも、まだ蕾だ……)



 拾い上げたローゼリアの花弁は閉じられたままだった。しかし、茎の断面を見る限り明らかに人の手で意図的に刈り取られている。

 昨晩セシリアとの逢瀬に興じていた際、中庭は一通り一望したがローゼリアの花が植えられている様子は無かった。一体どこから……、と訝しげにトキが眉を顰めたと同時に、バタバタと騒がしく廊下を駆け抜ける足音を彼の耳が拾い上げる。



「──セシリア様ッ!?」


「……!」



 通路から飛び出して来たのは、昨日トキにあからさまに敵意を向けていた男──ジーンだった。彼はトキの姿を確認した途端、やはり眉間に深い皺を刻んであからさまに顔を顰める。



「……チッ……なんだ貴様か……」



 心底不愉快そうに舌打ちを放ったジーンにトキもまた眉根を寄せ、ややあってハッと彼を鼻で笑い飛ばした。



「何だ、誰かと思えば過保護な騎士様か。うちの聖女様をお探しか?」


「この無礼者め! 何が“うちの聖女様”だ、セシリア様は貴様なんぞにやらん!!」


「おー、怖い怖い」



 激昂するジーンにわざとらしく肩を竦めてみせれば、ジーンは更にぴくぴくと眉根を寄せてトキを睨んだ。このまま掴み合いに発展しそうな空気感を漂わせていた二人だったが、ふと「ジーン!」と背後から野太い声が響いた事でトキを睨んでいたジーンの背筋がサッと伸びる。



「ガノン騎士長……!」


「セシリア様は見つかったか!?」


「……い、いえ……まだ……」


「……そうか。一体どこへ行かれてしまったのだ……」



 ガノンはジーンの返答にゆるゆると視線を落とした。トキは眉を顰め、二人の会話に割り込む。



「……おい。セシリアが何だって?」



 低い声で尋ねれば、ガノンが訝しげに細めた目でトキを見下ろした。やがて「君は……セシリア様のお連れの客人か?」と問い掛けたガノンの言葉には答えず、トキは淡々と続ける。



「おい、俺はアイツに何かあったのかって聞いてんだよ。聞こえねーのか、さっさと答えろデカブツ」


「貴様……! 騎士長にそのような無礼な口を……!」


「うるせえ、アンタは黙ってろ。俺はこのデカブツに聞いてるんだ」



 更に声を低め、ジーンの言葉を一蹴してトキはガノンを睨む。ガノンは冷静にトキを見つめ、やがて口を開いた。



「……昨晩から、セシリア様のお姿が見えんのだ」


「……何?」


「どうやら部屋にお戻りになっていないようでな。だが教会の出入り口は我々騎士団が常に見張っている。おそらく外には出ていないと思うが……今朝の祈りの時間にもセシリア様は現れなかった。それでジーンと共にセシリア様を探しているのだが……」


「おい! まさか貴様がセシリア様を隠しているんじゃないだろうな!?」



 ガノンの声を遮り、ジーンがトキの胸ぐらを掴み上げる。トキはうざったそうに彼を睨んだが、「ジーン、やめんか」とガノンが叱咤した事でジーンはぐっと声を詰まらせた。



「医療室にもセシリア様のお姿はなかった。ハンナにも確認している。彼はおそらく関係ない、手を離せ」


「……っ」


「すまない客人……、確かトキという名だったな。何か知らないか? セシリア様の行く宛てについて」


「……」



 トキはジーンの手を振り払い、ストールの位置を正しながら視線を落とした。彼の脳裏を過ぎったのは、昨晩自分に寄り添って微笑んでいたセシリアの顔。──そしてそんな彼女の頬を殴り、暗い瞳でトキを睨んでいた短髪の青年の姿だった。

 去り際にぼそぼそと言葉を残し、亡霊のようにふらりと闇に消えた不気味な背中を思い出す。まさか、とトキは目を見開いた。



(……まさか、あいつ……!)



 ──俺は例え彼女を傷付けてでも……セシリアを守る。セシリアを救う。そしてずっと傍に居るんだ……。それが、どんな形だとしてもな。


 最後にそう吐きこぼされたマルクの言葉が脳裏を過ぎり、トキは顔を上げた。



「アイツが、セシリアを……っ」


「……何?」



 ぼそりと呟かれたトキの言葉にガノンとジーンが眉を顰める。しかし直後、トキは聖騎士二人を突き飛ばして凄まじいスピードで走り出してしまった。



「お、おい! 待て!」



 背後からジーンの怒鳴り声が轟くが、彼の耳には届かない。風のようなスピードで暗い廊下を駆け抜け、燭台に灯った蝋燭の日が揺れる。


 妙な胸騒ぎが、トキの胸中を埋め尽くしていた。否、この胸騒ぎは昨晩から感じていたはずだった。セシリアからの不意打ちの口付けに気を取られ、あの場に一人で留まってしまった昨晩の己の行動を悔やむ。



(くそ……! アイツを一人で部屋に帰すんじゃなかった……!)



 彼女の身に何も無い事を願いながら、彼は行く宛てもなく薄暗い教会内をひたすら走る。──すると不意に、トキの視界には先ほども見た一輪の白い花が飛び込んで来た。



「──!!」



 トキは通路の真ん中で足を止め、息を荒らげながらぽつんと床に落ちているローゼリアの花を拾い上げる。──その花弁は、やはり閉じられたままだった。



(……また、ローゼリアの蕾……)



 固く花弁を閉ざしたまま刈り取られた白い花。それが落ちていた場所は、あたかも「中へ入れ」と言わんばかりの、木製の扉の前だった。隙間から見える室内は暗く、この位置からでは内部の全容が全く掴めない。



(……誘い込んでやがるな、俺を)



 明らかに意図的に誘導されている。トキはチッと舌を打ち、閉じきっているローゼリアをその場に投げ捨てた。


 ──この際、罠だろうがどうでもいい。他に手掛かりもない。



(……乗ってやる)



 誘導に従い、トキは僅かに開いた扉に手を掛ける。ギィ、と軋むそれをゆっくりと開いて部屋の中へ足を踏み入れ、廊下にローゼリアを残したまま、ぱたん、と扉は閉まった。



「……」



 誰も居なくなった薄暗い廊下に残されたのは、ローゼリアの蕾と痛い程の沈黙。そして、物陰に身を隠しながらトキの行動を見つめていた──何者かの後ろ姿だった。



「……」



 トキを部屋に誘導した何者かは小さく口元に弧を描き、踵を返してその場を離れる。コツコツと響いて離れて行く足音を、残されたローゼリアの蕾だけが、静かに聞いていたのであった。




 3




「──何だ、この部屋……」



 扉の奥に誘導されたトキは、ツンと鼻の奥に突き刺さるような甘ったるい香りに思わず表情を歪めた。香でも焚いているのだろうか、暗い部屋の中には砂糖と花と香草を混ぜて煮詰めたような何とも言えない強い香りが満ちている。



「くそ、最悪だな……」



 毒ガスを疑いつつストールを鼻まで引き上げて歩けば、そこは足の踏み場も無い程にとっ散らかった部屋だった。──とは言え、散乱しているのはゴミやガラクタなどではない。散らばっている物はすべて、専門書のような分厚い本ばかりである。



(魔道書、医学書、植物の専門書……造形の基礎の本まである……)



 ごちゃごちゃと本で埋めつくされた部屋の中を見渡し、常に薄暗い街ディラシナで過ごしていたおかげで夜目が利いて助かるな、と一人考えながら踏み場のない床を慎重に進んで行く。しかしふと、彼はその場に立ち止まり、散らかった室内のとある一角に目を向けた。



(……何だ? ここだけ物が無い……?)



 本で埋めつくされた部屋の隅。ちょうど人が一人ぐらい横になれる程度のスペースを擁したその一角だけ、不自然なほど綺麗に空いてしまっている。そっと床に指を触れてみれば、そこは埃すらも被っていない。



(……つい最近まで、ここに何かあったのか? ベッド……にしては幅が小さすぎる。縦長のみたいな物が置いてあったらしいが……)



 考えを巡らせるが、サイズ的に丁度良さそうな物がピンと来ない。どうやらここについ最近まで“縦長の何か”が置いてあったようだ。

 きょろりと辺りを見渡すが、大きな白い布が落ちている程度で特に手掛かりになりそうな物は見当たらない。



「……!」



 しかしふと、彼は周囲の壁に視線を向けて目を見張った。

 てっきり白い壁の模様だとばかり思っていたトキだったが、よく見れば壁中にびっしりと何かのメモらしきものが貼り付けられている。


 トキは腰を上げ、壁に近付いて走り書きされたメモの文字を目で追った。



『生育方法、綺麗な水、陽の光を遮断、血』

『心臓を貫く、永遠に眠る、硬化』

『血を吸う、品種改良』

『仮死状態、保持』

『死者、蘇生、永遠の命』

『呪いの果実』

『硝子の棺』

『ローゼリア』



「……何だ、これ……」



 壁にびっしりと貼られた不気味な走り書きの文字に眉根を寄せる。不可解な単語が羅列されたそれを訝りつつ、トキは本やメモが散乱している近くの卓上に視線を落とした。


 すると散らかった卓上の真ん中に置かれている、“逆さ十字”の紋章が記された見覚えのある黒い本が即座に目に留まる。



「……これ、アイツの……!」



 昨晩マルクが持っていた本だとすぐに理解し、トキはこの部屋が彼の部屋である事をようやく確信した。次いで、黒い本の隣に置かれた生成りの表紙の古びた童話のタイトルが目につく。


 ──ローゼリアの王女。


 聞き覚えのあるタイトルに、トキは眉根を寄せた。



(……ローゼリアの王女って……昔、ジルが図書館から借りてきたおとぎ話か……?)



 幼い頃、姉であるジルが夢中になって読んでいたおとぎ話を思い出す。──確か呪いの果実を食べて棺の中で眠った王女が、王子のキスで目を覚まして結婚する話だったか。子供ながらにバカバカしいと思っていた夢見がちな童話だが、なぜこんなものがここにあるのかとトキは黙り込んだ。



(……そういえば、この童話の題材になったのはの“ローゼリア”だって、ジルが昔言ってたような……)



 ──人を眠らせる毒を持つローゼリアの花。その花を元にして作られたおとぎ話だから、棺の中で眠ってしまう王女の名前が「ローゼリア」という名前なのだと、遠い昔にジルが言っていたような気がする。



(……童話の“ローゼリアの王女”に、さっき廊下に落ちてたローゼリアの蕾……)



 何か関係があるのだろうか、とトキが顎に手を当てて考え込んだ頃、彼の視線は卓上に残されているメモへと移った。何かの設計図のような計算式と図形、そして走り書きされた文字が目に留まり──彼は、息を飲む。



 ──“セシリアの棺”。



 そこにハッキリと記されていたのは、ただそれだけの文字だった。



(……っ……は……?)



 一瞬で背筋が冷え、目を見開く。まさか、と彼は先ほど壁に記されていたメモに再び視線を戻した。



『心臓を貫く、永遠に眠る、硬化』

『仮死状態、保持』

『呪いの果実』

『硝子の棺』


 ──『ローゼリア』



(あいつ、まさか……っ)



 トキは確信に変わりつつある疑惑を胸に秘めながら、先ほど不自然にスペースが空いていた一角に向かって即座に身を翻す。──ちょうど、人が一人ぐらい横になれる程度のスペース──そこに置かれていたの正体が、じわじわと脳裏に浮かび上がった。


 睡眠作用の毒を持つローゼリアの蕾。

 散乱した魔術書や医学書。

 “セシリアの棺”と記された設計図……。


 トキはじわりと手のひらに汗を滲ませ、奥歯を強く噛み締める。ここに置かれていたのはおそらく──“棺”だ。彼女を入れるための。



(あの男、ローゼリアの毒を使ってセシリアに何かするつもりなのか……!?)



 何故そんな事を、と考え至る前にトキは大きく舌を打ち鳴らし、積み上がった本を豪快に蹴り飛ばしてセシリアの痕跡を探り始めた。──マルクの目的が何であれ、走り書きされたメモを見る限りではロクな計画ではない。

 おそらく、彼女はマルクと共に居る。つい最近までここに置かれていたであろう「棺」が運び込まれた、どこかに。



(……落ち着け、考えろ……! 教会の出入り口には見張りが居たって話だ、外には出てない……! おそらくこの修道院内のどこかに居るはず……!)



 トキは焦る心を落ち着かせながら冷静に彼女の行方を分析する。


 昨晩、セシリアがトキと別れた後に捕まって連れて行かれたとして。マルクと対峙してから彼女と別れるまでの短時間では、この大きさの棺桶を運び出すのはまず不可能だ。例え彼女を捕まえた後で運び出したとしても、棺を持って教会内を移動すればかなり目立つ。



(床の埃が被っていない部分を見る限り、この横幅のモンをあの狭い扉から一人で運び出すのは現実的じゃない。他に協力者が居る可能性もあるが、そもそもこの部屋の出入り口付近には本が散乱してるんだ。おそらくあの扉からは出していない……)



 つまり、あの扉から棺を外へ運び出した可能性は低い。


 ──だとしたら。



(この部屋の中に隠し通路がある、ってのが一番可能性が高い……!)



 トキは注意深く床に目を向け、棺の移動した痕跡を探す。すると、床の埃の上にうっすらと伸びた、蛇が這ったような細長い二本の形跡を見つけ出した。



(……車輪の跡か。荷台に乗せて運んだらしいな)



 薄暗い中で目を凝らし、伸びる形跡の後を追う。そうしてトキが辿り着いたのは大きな本棚の前だった。床に目を向ければ、横にずらしたような埃の跡が残っている。



「……この裏か」



 トキは目つきを鋭く吊り上げ、足を振り上げると強引に本棚を蹴り飛ばした。ほとんど本が並んでいなかったそれは容易く傾き、派手に音を立てて床に倒れる。


 その裏から現れたのは、後から取り付けられたと思わしきスライド式の簡素な隠し扉だった。トキはそれをこじ開け、苛立ちをぶつけるかのように固い扉を足で無理矢理蹴り開ける。ようやくあらわになった地下へと伸びる緩やかな階段の奥は、暗くて何も見えない。



「……っ、セシリア……!」



 トキは彼女の無事を祈るように切羽詰まった声を絞り出し、暗く伸びる階段を駆け下りて行った。




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