Episode 6 再会と変化

 ――昼の少女に出会ってから、失われたものを思い出すかのように夜の少女は変わり始めた。奇妙な変化に戸惑いつつも、彼女は少しずつ光に導かれていく。


「こんばんは! また会えて嬉しいわ」

 次の晩に彼女が目覚めた時、その少女は淡い光を纏って目の前に立っていた。闇の中、輝く黄金色のドレスに身を包んだ彼女は、やはり夜空の一等星のようだった。

「……ええと、こんばんは」

 夜の少女のぎこちない返事に、訪問者は目を丸くした。

「あなた、言葉を話せたの! 昨日はなんにも話してくれなかったのに」

 夜の少女はふるふると首を横に振った。

 彼女自身も自分の口から言葉が出たことに驚いていた。今まで彼女は言葉の一つも知らなかったし、昨晩だって昼の少女が何を話しているのかほとんど分からなかったのに!

「わたし、言葉、わかるようになってる……」

 彼女は困惑気味に呟いた。なんだか自分が自分でなくなっていくような奇妙な感覚が、彼女を掻き乱すようだった。

 戸惑う彼女を他所に、昼の少女は満足そうに言った。

「それじゃ今夜は私たち、お話が出来るのね! それってとっても素敵だわ」

 目映い彼女の笑みに、夜の少女は何も言えずに頷いたのだった。


 二人は他愛もないことばかり話した。好きな色や花、好きな天気。それから好きな歌のこと。昼の少女が、大好きだという歌を歌った後、夜の少女も、毎晩歌っていた、彼女の元を去ったあの歌を歌おうとした。しかしやはり歌は思い出せなかった。

「どうしても思い出せないの。あの歌がなくっちゃ、ここは荒れ果てたままなのに。わたしは独りに耐えられないのに」

「きっとまた歌が会いに来てくれるわ。それまで私は絶対にあなたを独りにしない。約束よ」

 落ち込む彼女の前に、昼の少女は小指を立てて差し出して、にこりと微笑んだ。夜の少女はそれに自分の小指を絡めて頷いた。


 箱庭は荒れ果てたままだけれど、芽吹きの準備は少しずつ始まっていた。それは主たる少女の中で。

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