Episode 5 真夜中の円舞

 ――夜と昼が出会い、枯れ果てた箱庭に新しい風が吹き始めた。停滞していた運命がゆっくりと廻り始める。


 夜の箱庭の客人は、枯れ果てた草花と温度のない星月の中で過ごしていた少女の孤独に気が付いて、彼女を元気付けようと決めた。

 黄金色のドレスを纏った少女は、箱庭の中央に彼女を手招きして、膝丈のスカートの裾を摘み上げて小さく礼をした。夜の少女は不思議そうに彼女の姿を見つめている。

 次の瞬間、彼女は夜の少女の手を取って、軽快に踊り始めた。それは彼女がよく踊るワルツだった。彼女は踊りを習ったことはなかったが、そうやって大人たちの真似をして踊るのが大好きだったのだ。

 昼の少女のハミングに合わせて、二人はくるくると舞う。夜の少女はエスコートに合わせて、ぎこちなくステップを踏み始めた。


「そうそう、上手よ。その調子!」

 二人のワルツは徐々に息の合ったものになり、初めは拙かった動きも、何度か繰り返せば随分上手になった。まるでずっと前から知っていたかのように、夜の少女は軽やかに踊った。彼女自身が一番その上達の速さに驚いていた。習得したというよりは、忘れていたものを思い出した、という感覚に近かったのだ。

 一人でいるよりもずっと早く時間は過ぎ去った。二人はこの夜は日が昇るまで踊り明かしたのだった。

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