Episode 4 一条の光

 ――悲しみに昏れた少女の闇夜に、現れた一条の光。それは、まるで彼女の鏡像のように瓜二つで、けれど彼女とは真反対の、太陽のような少女だった。


 三日月が浮かぶ空の下、枯れ果てた箱庭で、少女はこの夜も膝を抱えて静かに泣いていた。

 不意に、彼女の背後から美しいソプラノの声が聞こえた。

「大丈夫?」

 びくりと体を震わせて、彼女が恐る恐る振り返ると、そこには一人の少女が、心配そうな顔で立っていた。

 見紛うほど彼女とよく似たその少女は、彼女の濃紺のドレスとは対照的な、目映い黄金色こがねいろのドレスを纏っている。薄明かりの中でも、その姿は一つの星のようにきらきら輝いて見えた。

「ああ、ごめんね、驚かせてしまったかしら。夕焼けに見惚れてぼうっとしていたら、突然此処に来てしまったの……だけど怪しい者じゃないわ――」

 呆気に取られている彼女に、その少女はあれこれ話し始めた。あどけない顔も艶のある黒い髪も、華奢な体もそっくりなのに、はきはきと話すその少女は、物静かな彼女とは真反対の快活な印象を持たせた。言葉の一つも知らない彼女は、その話を少しも理解し得なかったけれど、眩しいほどに明るいその笑顔に触れ、次第に彼女の警戒心は解けていった。

 二人が心を通わせあうのに、言葉は要らなかった。目を合わせた瞬間、二人は互いが最も近しい存在であることを悟ったのだ。

 そしてこの出会いが、夜に閉じ籠っていた少女の運命を大きく変えることになるのだった。

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