Episode 3 途切れた歌声
――錆び付いた心は、彼女の僅かな感情を凍らせてしまった。歌声の響かなくなった箱庭で、彼女は初めて孤独を知る。
夜ごとに流れていた美しい歌は、ある日突然途切れた。ずっと大切に守ってきたはずの旋律は、彼女の元を去ってしまったのだ。何度思い出そうとしても、声にならない音が喉を揺らすだけで、代わりに津波のような不安が押し寄せてくる。月の満ち欠けがいたずらに時を刻む中、音楽を糧にしていた草花は、ひとつ、またひとつと枯れていった。
新月の夜に最後の花が散った時、彼女は本当の意味で孤独になった。寂しさに打ち震えて、彼女は溢れ出す涙を静かに流し続けるしかなかった。こんな絶望は初めてだった。
枯れ果てた箱庭は彼女の荒んだ心だった。空虚に美しい夜空は、何も気付かないような顔で巡り続ける。ひとりぼっちの彼女には、
その日から彼女は空へ手を伸ばすのを辞め、目覚めた夜も眠りに就く朝も、膝を抱えて過ごした。まるで世界を拒絶してしまったかのように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます