Episode 3 途切れた歌声

 ――錆び付いた心は、彼女の僅かな感情を凍らせてしまった。歌声の響かなくなった箱庭で、彼女は初めて孤独を知る。


 夜ごとに流れていた美しい歌は、ある日突然途切れた。ずっと大切に守ってきたはずの旋律は、彼女の元を去ってしまったのだ。何度思い出そうとしても、声にならない音が喉を揺らすだけで、代わりに津波のような不安が押し寄せてくる。月の満ち欠けがいたずらに時を刻む中、音楽を糧にしていた草花は、ひとつ、またひとつと枯れていった。

 新月の夜に最後の花が散った時、彼女は本当の意味で孤独になった。寂しさに打ち震えて、彼女は溢れ出す涙を静かに流し続けるしかなかった。こんな絶望は初めてだった。

 枯れ果てた箱庭は彼女の荒んだ心だった。空虚に美しい夜空は、何も気付かないような顔で巡り続ける。ひとりぼっちの彼女には、其処そこはあまりにも冷たい世界だった。

 その日から彼女は空へ手を伸ばすのを辞め、目覚めた夜も眠りに就く朝も、膝を抱えて過ごした。まるで世界を拒絶してしまったかのように。

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