エピローグ
陸くんは、生まれて一日しか、生きることができませんでした。
陸くんが亡くなって、両親はとても深く嘆き悲しみました。
でも、しばらくして、また新たな命を預かることになりました。
「陸くんの生まれ変わりだね」
二人はそう言って、その子に「空」という名前をつけました。
そして、その子を大切に大切に、愛情深く育てました。
両親の愛に育まれて、その子は大きな愛を持つ少年になりました。
・・・
少年と少女は、学校の友達たちと別れて、家路につきました。
二人はいつものように手をつないで歩きましたが、とても晴れやかな顔をしていました。
道ゆく人が振り返るほど、幸せな二人でした。
やがて、少女の家の前に着くと、少女は少年に
「今日は本当にありがとう!」
と笑顔で言いました。
今までできなかった分を取り返すような満面の笑みに、少年はドキドキするのでした。
「じゃあ、今度は二人で会いましょう!
あなたが嫌だと言っても、私の方から押しかけていくからね!
それに、あなたのお兄さんにも、また会いたいし…。」
と言って、少年の後ろの方を見て、手を振りました。
少年はびっくりして、
「え、それって、どういうこと!?」
と少女に聞きました。
「あ、あなたには見えないよね、あなたの後ろにいるお兄さんのこと…。」
少年はそれを聞いて、二度びっくりしました。
「えっ、海ちゃん、君には見えるの、陸にいが…。」
「うん、見えるよ。見えるし、お話もしているよ。学校に入学した時に、私のところにやって来て、あいさつしてくれたのよ。弟の空をよろしくって。」
少年は本当にびっくりしました。
自分の死んだ兄がいつも自分のそばにいたというのも驚きでしたが、少女がずっとその兄と話をしていたというのも驚きでした。
(もし、それがほんとなら、いや、海ちゃんが言うんだから、本当にちがいない。
だとしたら…。)
「海ちゃん、今度の日曜にうちに来てよ!
そして、うちのパパとママに陸にいのこと、話してくれない?
それを知ったら、とっても喜ぶと思うんだ!」
少年の突然の頼みに、少女は、
「うん、いいよ!あなたの頼みなら、私、何でもするよ!」
とためらうことなく即答するのでした。
少女には、そんな二人を見て、うれしそうに笑っている陸くんの姿が見えていました。
おしまい
笑わぬ少女とよく笑う少年の物語 @yokkuru
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