序章 2

自分の息が徐々に荒くなってくるのを感じる。だが身体の疲労とは対照的に、少年は言葉を止めることが出来なかった。


「ねえイザーク、君も今こうして道を這っているのだろう?」

無論その問いかけへの答えは無い。

「皆んなも唖然としていたね。まさか『コンクレンツァ』の内容がこんなことだっただなんて」

数時間前のことを思い返し、少年は大きく息を吐いた。



あの時。

自らの後継候補である、齢15になる35人の少年達を前にして、年老いた教皇は言った。


「そして覚えておきなさい」


彼らは口を固く結んだまま次の言葉を待った。これから行われることへの緊張からか、誰もが顔を青ざめさせている。

教皇はそんな少年達一人一人と目を合わせてから、静かにこう告げた。


「コンクレンツァに敗れた者は魂を失うのです」


誰も声をあげなかった。

声を上げることすら出来なかったと言う方が正しい。

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