第5話

次の日から彼女は学校でも僕に話しかけてくるようになった。

いや、以前からしてはいたが僕のほうが避けるためその度に彼女はふくれっ面をするだけだった。

「数学わっかんないーーーーーーーなにこれーーーー」

「がんばれ」

「数学生み出した人恨んでやるーーーー」

「数学のおかげでいろいろ文化が発達したんだよ」

「数学生み出した人感謝してやるーーー」

こんな阿保な会話をしていると僕はある違和感に気付いた。


沢山の視線が僕と彼女に突き刺さっている


人から見られるときは大体2パターンだ。

人より優れたことをしたとき。

そして普通に反したことをしたとき。

きっと今日の僕は後者なんだろうと思う。


居心地が悪い、というか好奇心の目が気持ち悪い。

僕はどちらかと目立つほうではないからそう強く思った。


「ねね、今日一緒に帰ろ」

「…」

「もしもーし」

「…ごめん、今日は用事があるから」

「そっか!」


嘘をつかなければいけない自分への苛立ちと、そうさせる周りの視線への不快感が黒い渦をまいた。

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そして僕はさよならを告げる 白木はる @awus

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