第4話
彼女のお願いは思ったよりかは嫌なものではなかった。
一つ目のお願いは「アイス買って」だった。
お願いじゃなくパシりじゃないかと思ったが約束なので仕方なく買いにいった。
彼女も後ろからひょこひょことついてきては
「なんの動物が好き?」
「身長なんセンチ?」
「テレビなに見てる?」
と他愛の無い話をしてきたが、軽く流しながら近くのコンビニへと向かった。
コンビニにつくと一目散にアイスコーナーに走っていく彼女。
制服を着てなかったら小学生とも間違えられそうである。
「みて!焼きそば味だって!」
「折角買うんだから味に保証あるものにしなよ」
「人生において冒険は必要だよ、これに関しては譲らないよ!」
「…この苺アイス大人気なんだよな」
「それにする!」
こういう彼女のような人間は流されやすいのを僕は知っている。
アイスを買い、食べながら歩いていると彼女は二つ目のお願いをしてきた。
「私の名前呼んでよ」
「…なんでだよ」
「山下くん私の事「おい」とか「君」とかしか言わないじゃん!上司か!サラリーマンか!」
「下の名前では絶対呼ばないから」
「鈴野でいいよ」
「…わかった」
承諾して直ぐに下から目線を感じる。
こっちを穴が空くほど見てくる。
ビームでも出んのか。
「……」
「…鈴野?」
渋々名前を呼ぶと鬱陶しい位に彼女は目をキラキラとさせた。
「なに!?」
「アイス垂れてる」
「え?…わぁーーー!」
「ほら」
ティッシュを差し出すと近くにいる老夫婦が笑顔でこちらをみていた。
「微笑ましいですねえ」
「あぁ、そうだなぁ」
カップルだと勘違いしてるのでは無かろうか。やめて頂きたい。
「ありがとう、山下くん」
「あぁ」
ティッシュを受け取り、ポケットにいれる。
家の近くに来たので手をふると、珍しく緊張した面持ちの彼女に呼び止められた。
「あのさ、あのさ。明日も私と話してくれない?」
「は?」
「お願い!」
「…別にお願いされなくても話すだけなら構わないけど」
そういったときの彼女の嬉しそうな顔は忘れられない。
何故このとき僕はこう言ったのだろう。
きっと、心のどこかで少しでも彼女といるのを楽しんだ自分がいたからだろう。
このとき断っていたら_
僕の未来は変わってたのだろうか。
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