スマホに映る男

ペンギン太郎

スマホに映る男

あなたは知っているだろうか?


 電源を落としたはずのスマートフォン。

 そいつを覗けば、自分の顔が映るであろう。

 まるで、黒い鏡のようだ。

 注意深く観察をしてみよう。

 肩の辺りから、そぉっと覗く不気味な顔を。

 周囲には誰もいないはずなのに。


 ここで忠告をさせてもらおう。

 目を絶対に合せてはいけない。

 死者に憑かれてしまうから。

 命を失った者は孤独である。

 自分に気づいた者を、黄泉へ引きずりこもうとするのだ。




 ある日のことだった。

 最初は気のせいだと思った。

 スマホをスリープモードにした瞬間であろうか。

 不気味な男が、黒い画面を過ぎった。

 街中のため、通行人でも映ったのだろうと考えた。

 青白くて痩せた男。

 網膜に焼きつけられたかのように忘れられない。

 そいつは、にたぁと笑っていた。


 家で晩飯を食べていた時のこと。

 仕事で疲れていた俺は、スマホで動画鑑賞をしていた。

 食器を洗うため、画面を暗くする。

 あいつの顔が広がった。

 瞬きをするぐらいの一瞬であったが。

 あの双眸は、確実の俺の顔をとらえていた。

 自分は精神的に病んでいるのだろうか?

 幻覚を見てしまうほどに。


 そいつの現れる頻度は、少しずつ増えていった。

 油断をしていた頃に、視線を合わせてしまう。

 光を失った眼球は、嬉しそうに輝いている。

 歯を剥きだして、口を歪めている。

 そいつの顔が、脳裏へと刻まれていく。

 目を閉じても、男は闇に浮かんだまま。

 俺は憑かれてしまったのだろうか?



『ミ……エテ……イルン……ダロ?』



 マルウェアによる悪戯なのか?

 調べてみたけれど、そんな噂はどこにもない。

 知りあいに相談するわけにもいかない。

 仕事疲れのせいだと言われるだろう。

 テーブルに置かれたスマートフォン。

 とくん。心臓が跳ねる。

 息を吐いて覗きこむと、例の顔があった。

 もちろん、電源など入れていない。

 明らかに、俺の方へ黒目を向けている。

 何かを求めるかのように。




 俺はズボンとパンツを下ろしてから、自慢の息子を出した。

 それをスマホへと近づけた。




 それ以降、男は画面に現れなくなった。

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