戦争編4 味付け海苔だけは許さない
よろしい、ならば戦争だ。
この味オンチ地球代表、一週間カレーでも飽きることを知らないこの私でも、許せないことというのはこの世にいくらか存在している。
以前に言ったかもしれないが、どういう星のもとに生まれたのか私はちょこちょこ住む場所を変えている。生まれは愛知県だが広島県にいたこともある。現在は東京住みである。そんな私だからその地域の食習慣というものを目の当たりにするし、大抵は味オンチの寛容さと無関心さからどうでもよくて慣れてしまう。「醤油が甘いなんてありえないよねー」とか、そんなことでいちいち目くじらを立てたりはしない。
しかしこれだけは許されない。
広島県、あるいは中国地方の一部に伝わる習慣として、おにぎりに対するある侮辱的な行為が連綿と続いているのだ。私は割と本気で「おにぎり救済連盟」でも立ち上げて問題視するべきなのではと考えている。
なんと、かの地域ではおにぎりに味付け海苔を巻くのだという!!
思えば県民性の差を針小棒大に取り上げる某番組でそんな話も聞いたような気がしていたのだが、やれやれ実際に目にすると驚くことというのもあるものだ。向こうで初めて買ったスーパーのおにぎり、何やら海苔がべたつくと思ってよく検分して見れば味付け海苔である!
既に味として九割がた完成しているおにぎりに新しい味をプラスするという発想も理解しがたいが(味付け海苔を巻くことを前提に味が調整されている可能性はあるが)、おにぎりにおいて海苔とは、第一に米のべたつきから手を守るためのものである。それを味付け海苔とは………………。
べったべたになるやん、手が。
それから私の広島生活は、常に味付け海苔付きのおにぎりとの戦争であった。やはり味付け海苔は一部に不評なのか、それとも単にどういう海苔を使っているか表記しているだけなのか、幸いおにぎりの包装に海苔の種類は書かれている。そこから「焼きのり」と書かれているおにぎりを探す苦行を理解できる人間はそういないだろう。広島県のパン食人口が増加したならば、それは間違いなく味付け海苔のせいだといってもいい。
しかし私の広島時代に関わった周囲の人間の多くは広島圏外の出身だったにもかかわらず、あまりこの「味付け海苔で巻いたおにぎり」が話題になった記憶がない。味オンチゆえに味以外のところに妙に敏感だったのか、案外みんなも食に興味なんてないのか。
東京住みの現在、味付け海苔のわずらわしさから解放されてもなおコンビニで買うのは大抵パンである。
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