戦争編3 ラーメンの頂点
きのこたけのこ戦争、お好み焼きの原点をめぐる論争の次はラーメンである。こうして並べてみると、美食家(少なくとも自分に味覚があると信じて疑わない連中)の食に対する議論は通り一遍というか類似的というか、およそ頂点を決め難いものの頂点を決めるという徒労が主であることが分かる。まあ、彼らの主目的は結論を得ることではなく論争そのものにあるのだから、どだい頂点を決めようのない話題の方が好都合なのだろう。
さてラーメンである。そも、「好きなラーメンは?」という論争は成立するのに、これがうどんやそばになるといまいち成立しがたい気がするのは興味深い。いや、もちろんコアなファンは「うどんは月見にかぎる!」「いやきつねだろう!」と喧々諤々やっているのかもしれないが、どうしても、ラーメンほどポピュラーな論争になりにくい感覚がする。時間の埋め草として適当に話題をふるならば、私だって「好きなうどんは?」よりも「好きなラーメンは?」と聞くだろう。
ゆえに私も今回はそう聞くのである。「好きなラーメンは?」
ただし、ここでいうラーメンとは博多ラーメンや札幌ラーメンのような地名を持つものではない。私はそうした本場のラーメンを食べたことがあまりないのだ。ラーメンは好きなのだが、根がインドアだから仕方ない。まったく食べたことがないわけでもないから、そのうちエッセイにも載せるかもしれないが。
ここでいうラーメンの好みはスープに終始する。醤油、塩、豚骨、味噌。仮に同じメーカーの同じシリーズのインスタントラーメンが並んでいたとしたら、あなたは何を選ぶだろうか。これはそういう問題である。
とはいえ、時代は少しずつ変化して、上記の味だけがスープのすべてとは言い難いところが出てきている。濃厚魚介だしとか、シーフードとか、カレーとかいろいろあるのだ。みたらし団子味とかショートケーキ味を出したどこぞのカップ焼きそばほどふざけてはいないにしても、豚汁味などというものもある。ラーメンひとつ、スープひとつを語るのにも単純化しがたいのが今の世だ。
するとあれか。スープを主として好きなラーメンはと聞くのはもう適切ではないのか。もっと条件を厳しく制限する必要がある。
たとえば好きなインスタントラーメンは? ただしここでいうインスタントラーメンとは三から五袋入りのいわゆる「袋麺」である、とか。これくらい条件を絞って初めて議論になるのだろうか。
その条件で行けば、私の好みは日清のチキンラーメンである。ついでにカップ麺部門で好きなものは同じく日清のカップヌードルである。
なぜか? この味オンチが味で決めているはずも無かろう。
作るのが楽なのだ。どちらもお湯を入れて三分で出来上がり。このシンプルさに勝るものはない。インスタントとはかくあるべきという美学すら感じる。蓋を開き、袋を三つも四つも取り出し、やれあれは先に入れろ、やれあれは蓋の上で温めろと指示を出してくる時点でインスタントの名折れだ。恥を知れ。
もはやそれは調理であり、インスタントとは呼べない。準チョコレート菓子のように、「準即席めん」とでも名乗ったらどうだろうか。
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