貧乳が当たり前となった素晴らしい世界で

希常(きつね)

第1話 巨乳という概念が存在しない退屈な世界

 20XX年 日本人のとある女性科学者(貧乳)がこんな発明品を開発した。


 これを貧乳薬という。 これを飲んだ人は遺伝子的な変化が起きて全員が貧乳になるというものであり。 実際にそれを飲んだ人は皆総じて貧乳になった。


 そしてこの科学者(ちっぱい)は他の貧乳の女性を引き連れて日本を乗っ取った。これを後に言う貧乳革命という。そしてこの貧乳薬を国中の女性に飲む事を強制した。


 その結果国中から巨乳という存在は消えて、巨乳という概念も、そしてそれどころか貧乳という存在が当たり前となり貧乳という概念も消えた。


 それを一億総貧乳化政策と呼び、その政策は概ね女性からは好評だった。胸で判断されることもなくなり、貧乳で悩む人もいなくなり、また男性から性的な目線を向けられることも少なくなったと。事実、性犯罪の件数もそれなりに減ったらしい。


 勿論少なからず男性の反発もあったが、しかしそれを高らかに口に出せるような人は皆無に等しかった。何故ならここで反発するという事は女性を胸で判断していたと、そして巨乳好きだと認める事と同義であるからだ。


 この貧乳薬は他の国でも徐々に使われるようになり、今では世界の女性の殆どは貧乳となったのだ。


 


 だがそんな貧乳が当たり前となった世界の中、いくら巨乳好きが異端とされ迫害されようとも俺は世界の中心で巨乳を叫ぶ。


 それは俺の信念でありどんな状況であっても変わりようはない。




「巨乳は正義だっ!! あの柔らかで豊かな膨らみには愛と母性とそしてロマンが詰まっているんだ!! ああ……大きなおっぱいでパフパフされたい」 


「何言ってるの……最低」


「本当に胸でしか女子を見ない男子って最悪」


「本当に安田ってイケメンだけど内面ゴミだね」


「ぐっ……」


「安田……お前巨乳のどこがいいんだ? あんなの無駄に脂肪が付いてるだけだろ」


「し、脂肪とか言うなっ! おっぱい様に失礼だろう!! あれは神が人間に与えた恵み、そう恩寵なのだ!」 


「おい安田……女性を胸で差別する時代は終わったんだぞ」


「違うんだ! 俺は胸で差別しているのではない、ただ巨乳を愛でているだけであって貧乳を否定しているわけではない!」


「はぁ……お前も相変わらずだな」

 

 俺の名前は 安田 一郎 ただの巨乳好きだ。 ただ巨乳を愛し、巨乳を尊び、巨乳を崇拝する男子高校生だ。


 しかし見てもらえば分かる通り、世間での巨乳派への風当たりは物凄く強い。女性からは勿論、男性側からも巨乳派はいい目では見られない。


 それに加え今では巨乳好きというだけで大学受験や就職活動に大きく不利が出るような時代だ。だから巨乳が好きだけど言い出せないような隠れキョニュシタンも沢山いるのだ。


 しかしそんなものは関係ない。好きなものを好きと言って何が悪いのだ! いくら巨乳派が迫害されようがどんな扱いを受けようが俺の信念は変わらない。


 彼の意志は迫害されることで逆に強まっているようにも見えた。


 ガラガラ


「はぁ……また懲りずに色々と騒いでいるのね」


「お、お前は赤松……」


「もう日本から巨乳はいなくなったのよ諦めなさい」


「くっ……誰のせいだと思って」


「ふっ……私を責めているのならお門違いよ。巨乳派は頭まで悪いのね」


「ぐっ……」


 今ドアから入ってきたのは。このクラスの委員長である 赤松 鈴葉 である。 そして彼女は貧乳薬を開発した科学者 赤松 音 の娘である。


「私はあなたのためを思って言うわ、そんな邪な思想は捨てなさい。何回も言うけどこの国から巨乳は完全に居なくなったのよ、望むだけ無駄だわ」


「そ、そうとは言い切れないだろう……」


「いいや……お母さんの科学力を舐めないで。……ありもしないものを追って不利な立場に置かれるなんてバカとしか言いようがないわ……折角貴方はそれなりに顔が整っているのだから普通の思想に戻ればもっと学園生活を遅れるでしょう」


「お…おうありがとうな」


「あっ……べ、別に勘違いしないでよね! 私はあなたがかっこいいという事実を言っただけであなたが好きとは一言も言ってないんだからね」


「おう……」


クラスメイト一同(……こいつら早く付き合えよ)



 授業を終えて家に帰ってすぐ英語の宿題の問題集を忘れてきた事に気づいた。


「ああ……あの英語の先生怖いからな……仕方ない面倒くさいけど取りに戻るか」


 そして再び校内に入り教室のドアを開けると。


 ……そこには窓から入る夕日に照らされた巨乳の天使が上半身にブラジャーを付けた状態でいた。


 白い肌に滑らかそうな肌の質感、ほっそりとした腰、そして何より特筆するべきはその胸。ブラジャー越しにでも分かる大きな胸はハリも形も良さそうでまるで一種の芸術品を見ているようだ。


 これまで古い青年雑誌でしか見れなかった巨乳の女の子が目の前に居ることに得も言えぬ感激を覚えて見とれていると。


 って……どうして巨乳の女の子がこの教室に? ってあれっ……?


 その女の子が此方を振り返って目が合う。その女の子は。


「い、委員長!!!???」


「って何でここに安田がっ!!??」


 


 








 


 




 


 



 

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貧乳が当たり前となった素晴らしい世界で 希常(きつね) @kithune

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