第4話


わたしは動けないまま、目の前で銃声が響いた。バキューン!と言うとてつもない音とともに、私は崩れては……いなかった。


◇◇◇


あたしたちは急いでいた。そして、その場所にたどり着くと、そこには左腕を抑える月氷の姿があった。そして目の前には、カウボーイ風の「シャドウ」の姿もある。

その指が引き金にかかった。その瞬間私は、



わたしの目の前で突然、カウボーイの腕が吹き飛んだ。右手首を失ったことで、持っていたリボルバーが重たい音とともに、コンクリートの上に落ちた。

私は考えることが出来なかった。思考の停止は一瞬で、すぐにわかった。なぜなら、私のすぐ左側から声が聞こえたからだ。


「姉さん!」

「月氷!」


「降りるよ、ひかるちゃん」

「はい」


私と星ちゃんは転がるようにして着地した。

そして、すぐに叫んだ。


ひかるちゃん、止血をしておいて」

「はい。でも、どうするんですか?」

「決まってるよ。あいつを倒す。そのために私は、んだ」


この言葉には色々な意味があった。

その意図を汲み取ってくれたのか、星ちゃんは、小さく頷いた。


「ありがとう。じゃあ、最終局面ラストゲームの始まりだよ」

「あの眼、……よね」


手当を受ける月氷の声が聞こえた。

その意図を汲み取る。今の私は、。それこそが、本当の私。完全に融合しあった存在。ためにやって来た存在だ。


「さあ、やろうか。もう、手加減はしない」


その時の私の左眼は、爛々らんらんと紅く輝くのだった。


◇◇◇


私は38口径の銃弾であることを確認する。

カウボーイ風の相手は、左手に先程の黒い銃を持っている。それは、私のと同じで38口径だった。


バーン!


先に撃ったのは、カウボーイ風の敵の方だった。同時に3発。いや、最後の一発に隠れて4発目が放たれていた。

私にはそれが、ように見えた。

した力で、私は交わす。


「遅い」


「えっ?!何が起きてるんですか!日菜先輩、どうしちゃったんですか?」

「落ち着いてください。あれか本当の日菜なんですよ、きっと」

「もしかして、あれが日菜先輩の言ってた?確かに、左眼が紅いですけど。あんな動きできませんよ!」

「ええ。だからあれはすでに、何でしょう」

「完全な、予測?ですか。そんな、月氷先輩でも出来ないことなんですよ!」

「だからですよ。だから、姉さんは……いえ、は今こうしてここにいて、私たちのために闘っているんですよ」


あたしは、二人の会話を少しだけ耳にした。二人のために闘っているのは、決して間違いではないけれど、私はただ大切なものを守るために自分にできることをしているだけだ。


「だからこんなところで、負けはしない」


私は走った。

後ろは振り返らない。


(これしかない。やつ確実に倒すには、この1発を当てるしかない。勝負は一度きり。面白い)



私は走る。カウボーイ風の「シャドウ」に近づくために。

その間にも、弾丸は飛んでくる。それは先ほどよりも多い。


「避けられないなら」


私は日輪の持つ特別な力を使う。

月輪が追尾や、ライフルなどになれる「超遠距離射撃」を得意とするなら、私の日輪は全くの逆だ。「超近距離戦」に持ち込めば私は負ける気がしない。


グリップをおこし銃自体をまっすぐにする。

すると、銃はマゼンダ色のビームソードへと変化した。すでに銃としての本質を放棄したそれは、膨大な熱量を持ち、金属でもサイコガンでも切れる。


弾丸を切り落とす。

それと、走ることに全力を注いだ。幾重にも放たれる無数の弾丸を剣で弾き落としていく。しかし後少しというところで、再び4発は弾丸が撃ち出された。けれどそれは、私の真後ろを飛んでいく。2発はフェンスに当たって、もう2発を押し戻した。その軌道は、実に計算されていて、音だけで判断すると、私の後頭部、それから心臓を狙っている気がする。


しかしそれが私に届くことはなかった。なぜなら私は、していたからだ。



バキューン!!


2発の弾丸。

それは私のすぐ後ろで炸裂した。


「日菜には」

「日菜先輩には」

「「指一本触れさせない」」


漫画でありがちなセルフを吐かれた。

そこまでは予想していなかったけれど、私は二人を信じていた。だから安心して背中を任された。私は一人じゃないんだから。


私は狙いの場所まで到達した。

それはカウボーイ風の敵の懐だった。カウボーイも反応するからだ、遅かった。


「ゼロ距離射撃」


私は素早く銃に戻すと、直接体に当てて銃弾を撃ち込んだ。ズドン!という音とともに、体にカウボーイの体が私に預けられる。私が離れると、カウボーイは膝をつき、動けなくなると消滅して行った。


そこには何も残らなかった。


◇◇◇


私たちは、勝利を祝った。

祝うと言っても名ばかりで、互いの体を支え合い、帰るだけだった。


「何とか倒せたね、月氷、ひかるちゃん」

「はい。でも、倒したのは日菜先輩ですよ」

「そんなことないよ。二人がいなかったら、私死んでたよ。だから最後信頼できた。大切な友達だから」

「相変わらず楽観的ですね、姉さんは」

「月氷ちゃん、怪我はどう?」

「大丈夫です。骨は折れていないみたいですし、まあ痛みはありますがね」


苦笑いされた。

私はそれを見て、空を見上げた。さらには一等星がキラキラと輝いていた。


「それじゃあ、皆さん帰りましょうか。へ」

「そうだね。じゃあね、月氷ちゃん。星ちゃん。またどこかで」

「はい、先輩」

「じゃあ、ね。二人とも」


あたしの帰るべき今の街へ」

わたしの大切なこの町の家に」

「わたしはを恋焦がれる、夢目指すあの場所へ」


それぞれの帰路を歩むのだった。

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日輪と月輪のアンリミデッド 水定ゆう @mizusadayou

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