第66話 二人の大臣

 グイファスは馬に軽く鞭を打ち、再び走らせる。その後をリックス少将、マルスと続き皆がその後を追った。城のエントランス前に着くと、兵士や使用人がメレンケリ達を出迎えてくれた。


 兵士は乗ってきた馬を引き受け、使用人たちはそれに積んである荷物をてきぱきと下ろしていく。お陰でメレンケリ達は特に何もすることはなく、グイファスに導かれるまま城のエントランスに入った。するとそこでは品の良い壮年の男と、体格のいい男がそれぞれ立っており、グイファスは彼らを見るや否や、彼の後ろを付いてきていたリックス少将を振り返った。


「リックス少将。先に我が国の大臣を紹介させてください。皆さんが来ると知って、どうやら待っていてくださったようですから」


 グイファスがそう言うと、二人の大臣うち一人が進み出て挨拶をした。


「私は、この国の大臣の一人、ヤクマと申します。この度は、長い旅を経てよく来てくださいました。歓迎いたします」


 ヤクマは、リックス少将に手を差し伸べて握手を求めた。ヤクマは壮年の男で、物腰の柔らかい印象である。リックス少将は自分よりも年上の男と対峙するも、緊張する様子もなく普段通りに接した。


「私はリックスと申します。ジルコ王国の軍人で少将という地位についております。こちらこそ、貴国の力になれること、心より嬉しく思います。今回は大蛇との戦いと言うことで、若い面々を連れて参りました。きっと必ずお役に立てると思います」


 ヤクマ大臣は目を細め、眩しそうにリックス少将の後ろに並ぶジルコ王国の軍人たちを眺めた。


「本当に凛々しい人たちですね。我が国の為に、このように人員を用意して下さったこと、ジルコ王国の国王陛下に感謝せねばなりません」

「ヤクマ、ここで話すのもなんだから早く中に通さないか。我が国王陛下も彼らが来るのをお待ちかねだ」


 ヤクマ大臣にそう言ったのは、彼よりも年若い男である。グイファスと同じように浅黒い肌をしており、背が高い上に引き締まった体をしている。ジルコ王国の軍人たちと並んでも、勝らずとも劣らない中年の男だ。


「それは分かっているよ。だが、折角グイファス殿が挨拶をせよと言っておられるのだ。先に自己紹介だけはしておいた方がよいのではないかな」


 ヤクマ大臣に言われ、「それもそうだ」とばかりに、中年の男は咳払いをするとリックス少将に向き直った。

「申し遅れた。私の名前はサルジオン。彼と同じく大臣をしている。今回の件は本当に助かった。心から礼を言う。ありがとう」

 そう言って、サルジオン大臣は軽く頭を下げた後、リックス少将の手を取って握手をする。

「いいえ、こちらこそ。あたながたのお力になれることを嬉しく思います」

 サルジオン大臣は、リックス少将の言葉に真剣な顔で頷くと、くるりと背を向けジルコ王国一行に言った。

「まずは我が国の国王陛下にお会いして頂こう。あなた方が来るのを心待ちにしていたのだから」

 サルジオン大臣にそう言われ、メレンケリ達は城の中を案内された。


 長い長い廊下を通り、奥まった部屋に向かう。ようやく到着した場所は、大きな白い扉に金色の装飾がしてある部屋で、外では兵士が扉の両脇に立っていた。


「この先に、国王陛下がおいでです」

 グイファスがそう言うと、両脇に立っていた兵士たちが扉を開く。


 ゆっくりと開けられた扉の先には、書斎というに相応しい場所が広がり、その奥で窓の外を眺める一人の男性が背を向けて立っていた。

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