3、サーガス王国とエランジェ国王

第65話 サーガス王国へ

 メレンケリ達は、3日目の早朝に支度をして泊った宿を出ると、その日の昼ころには次の街へ辿り着いていた。そこは人々が多く行きかう活気のある場所で、晴れていたのもあってか、人々は道の端にずらりと並んだ露店から軽食を買ったり、皿を買ったり、布を買ったり、とにかく色々な商品が立ち並ぶ店の中から人々は自分の目当ての物を探し思い思いに買い物をしている。

 また露店が並ぶ先にある街並みは、今までとは打って変わって煌びやかであった。

「沢山の人がいますね。街並みもとてもきれい」

 メレンケリは壁が白く屋根がオレンジ色で統一された美しい街並みを、マルスの馬に乗りながら堪能していると、彼は彼女の背後から答えた。

「ここはリマイスという街だよ。サーガス王国の城がある、一番大きな街だ」

「リマイス……」

 メレンケリはそう呟いてから、はたと気が付いた。

「ということは、ここはもうサーガス王国と言うことですか?」

「そうだよ」

 頷くマルスに、メレンケリはもっと早く言ってくれればいいのに、と思ったのと同時にとうとうついにこの時が来たのだと思った。


「ここがリマイス……そしてここがサーガス王国……」


 それからメレンケリ一行がリマイスの街を北側に進んでいくと、周りの建物とは違って高貴な雰囲気が漂う建物が見えてくる。それはメレンケリが近づいていくにつれて、この国で最も貴く、そして中心の場所であると確信する。


「ここがサーガス王国の城だよ。アファレスクという名前だそうだ」

 マルスの言葉に、メレンケリは嘆息した。長い道のりを経て、メレンケリの目の前にサーガス王国の城がそびえ立つ。ジルコ王国の城と同様に、石を積み上げて作られた城は、とても大きく堂々たる姿をしている。その城を囲うように、鉄格子がぐるりと敷地を囲い、警備にあたっている兵士たちが辺りを行き来していた。

 門扉の出入り口に来ると、グイファスが「城の者に、我々が到着した旨を伝えてくる」と言って、メレンケリ達一行をその場に残し、馬を走らせ城の中へ入って行った。


「メレンケリ、あそこを見てくれ」

 グイファスを待っている間、マルスに言われ指で指されたほうを見る。するとそこには、東側にある塔がバラバラに崩れているのが見えた。

「あれは……」

 それを見て、以前グイファスがメレンケリに話したことを思い出していた。塔の一角が大蛇によって壊されたという話である。

「大蛇によって壊されたらしい。俺がサーガス王国に来た時に、この国の国王から話されたんだ。フェルさんは、大蛇は人の姿を取っていると言っていたけれど、どうやらそうでもないのかもしれない」

「……」


 メレンケリは東の塔を見つめた。まだ修理をする段取りが整っていないのか、周囲には近づかないように紐が張られているだけである。東の塔の外壁には、所々何かに絞めつけられたような跡が残っていたが、それがまさしく大蛇の締め跡であろう。


(何て強い力……)

 グイファスに話を聞いたときは意識していなかったが、東の塔の現状を見て大蛇の力をようやく実感した気がした。自分は今からその大蛇と対峙する。そう考えると少し不安がよぎった。


「大丈夫か、メレンケリ?」

 マルスに尋ねられ、メレンケリは頷いた。

「……ええ。大丈夫です」

 そう答えた時、グイファスが城の奥から戻ってきた。彼はリックス少将の傍に馬を寄せる。


「リックス少将、陛下が皆さんにお会いになりたいそうなのです。来て頂けますか?」

 リックス少将は頷いた。

「ああ、それは勿論。だが、荷物や馬はどうしたらいい?」

 グイファスは城の奥の方に一度視線をやってから、再びリックス少将に戻す。

「もう少し奥まで馬で行くと、使用人たちが待っていますのでそこで預けて下されば良いかと。部屋は全て城の中に手配しているとのことだったので、そちらに持っていくことになると思います」

「それなら、そうするとしよう。我々も早く国王陛下にお目通りしたいと思っていたところだから丁度良い」

 グイファスは頷いた。

「では、行きましょう。こちらです」

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