第7話 お騒がせ幼女ルル

さて、ヘラにチヨメっていう名前も付けれたし、次はルルのイベントを終わらせるか!


・・・まぁ、なんか嫌な予感するんですけどね。


てことで、ルルをタップする。チヨメの時と同じようにルルにカメラがよっていく。


「あっ! 支配人! こんばんわ!」


「相変わらず元気だなルルは。んで、どうしたんだ?」


こっちに気づいたルルがニコニコの笑顔で頭を下げる。


「はいっ! 元気です! えー、用事というのはですね。畑の作物が実って収穫も終わらせたのでそのお知らせをと」


「えっ? もう実ったの?」


1時間ぐらい前に植えたばっかだよね? あっ、もしかしてこれもゲーム仕様だったりするの? 多分するんだろうね。


「はい! じゃがいもは5分で、きゅうりが30分で、トマトが1時間で実りました!」


おぉ、ゲームのまんまじゃねぇか。


「それって保管庫に閉まってるんだよね?」


「はい! それで次育てる苗はどうしますか?

一応初心者クエストの畑で作物を回収しよう! ってのをクリアしたのでトウモロコシの苗を5つ手に入れましたけど」


おっ! そこもゲームに倣ってるんだな。ありがてぇ! 今から寝るところだし3時間かかるトウモロコシ5株とトマト1株を植えといてもらおう。


「じゃあトウモロコシ5にトマト1でお願い」


「了解しました! 最後に言い忘れていたことなんですけど、もし戦闘が起こったらすぐさまパーティー編成の画面に飛んで、出撃ボタンを押してくださいね。

じゃないと私達がそっちの世界に召喚されなくて支配人はすぐ死んじゃいますから!

私達が同じ世界に居ないと支配人の守りはガラガラなんですからね!

というかチヨメさんには仕事を与えず、出撃して貰って支配人を守って貰いたかったんですけどね」


うーん、俺は完全に順番を間違えてしまったようだ。確かに夜襲がないとも言いきれないこの世界。誰かに家の見張りを任せた方が良かったのかもしれない。


「もうトマトとトウモロコシ植えちゃってるの?」


「いえ、まだ植えてませんよー!」


ん? じゃあルルにこっちに来てもらったらいいんじゃないのか? 別に見張りをしてもらわなくてもルルが居るだけで効果は働くんだろう?


「じゃあルルがこっちの世界に来てくれる?」


「えっ? 私ですか? あっ! そっか! 私でもいいんでしたね! うっかりしてました! じゃあパーティー編成から私を選択して出撃ボタンを押してください!」


「OK!」


俺はパーティー編成と書かれたボタンをタップして、ルルを出撃させる。すると、なにやらスマホからシュルシュルと光のリボンが伸びていき、それらが人の形を形成していく。


「はーい! 支配人! お久しぶりです! ルルです!」


「しーっ! もう夜で葵と明莉は寝てるんだから静かにな」


俺がそう言うとルルははっとした表情をして、咄嗟に口を両手で抑えた。


「す、すみません。初めての現界に戸惑ってしまいました。しーっ! ですね!」


・・・ルル、ほんとに分かってるのかな?


「んで、こっちに来たのは良いけどどうする? 俺はもう寝るからつまらないんじゃいか?」


「んー? いえ! 私も一緒に布団に入ります!」


・・・はっ? いや、いやいや。流石にゲームの世界と言えども女の子と同じ布団で寝るのはヤバいでしょ。


「いや、それはちょっと・・・ 倫理的になんというか・・・ねぇ?」


俺がなんとか穏便に断りを入れようとすると目をうるうるとさせるルル。


「ダメ・・・ですか?」


・・・こういう時ってどうしたらいいんだろうね。僕には分からないよ。


「やっふー! お布団です!」


結局俺はルルのうるうる攻撃に耐えきれず布団をルルに明け渡した。まぁ、あれだ。めちゃくちゃ年の離れた妹だと思えばなんてことない。きっとなんてことないさ。


だが、このことを従姉妹達にバレないようにせねば。俺のこの能力についてはまだ明莉と葵には説明していない。つまり、その2人がこの状況を見れば・・・


まぁ、嫌われるのは目に見えているだろう。訳の分からない世界に連れてこられた直後の夜に自室のベッドで見知らぬ女性と二人きり。完全にやべぇやつだもんな。2人だけには絶対に知られないようにしよう。だって、この世界で心の底から信頼出来るのはあの二人 コンコンッ!


・・・フラグはすぐさま回収されたようだ。


「お、お兄さん! 入っていいですか!?」


こ、この声は葵か。正直に言うとダメです。今、入ってこられると好感度が急降下します。俺がそんな崖っぷちに晒されている時、ルルはと言うと寝ていた。こいつの順応力やべぇな。

と、とにかく時間を稼いでこいつを元の世界に戻さなきゃ?


「あっ! 葵か?」


え、えーっと! メニューのパーティー編成に飛んでっと。


「はい、私です」


「そうか。今行くから少し待ってくれ」


ど、どのボタンを押せばいいんだ?


「あっ、大丈夫です。鍵閉めてないですよね? 入っていいですか?」


あっ! これだ! 撤退ボタン!


「・・・入りますね」


あ、あぶねぇー。ギリギリだ。ルルが消えきった瞬間に葵が入ってきた。


「お、おうぅ! どうした? こんな時間に」


「なんでそんなに焦ってるんですか? ・・・まさか、その、してたんですか?」


いいえ、そんなことはしてません。てか、こんな訳分からん状況で出来るやついるの?


「いや、してないから!」


「そ、そうなんですか?」


あっ、これ何言ってもしたってことになるやつー。辛。


俺が葵の勘違いに落胆していると、何やら葵が鼻をスンスンと鳴らし始めた。おっ、匂いがしないからやってないって気づいたか?


「あれ? なんでですかね? お兄さん以外の匂いがします。昨日までなかった匂いなんですがね。女の子の香りというか」


・・・えっ? 気づくにしてもそっちなの? ルルがこの部屋にいた方を気づいちゃうの?


「そ、そうか? あっ! 異世界に来たからなんか変わったんじゃないか?」


「え? でもそれなら私の部屋の匂いも変わってるはずですよ?」


や、やべぇ! 理詰めで来てる。な、なんとか! なんとか乗り切らなければ!


「あっ、そういやあそこにある香水倒しちゃったんだよなぁ! それじゃないか?」


「いえ、違います。もっと爽やかな匂いなんです。ゴテゴテ着飾っていない。・・・まさかお兄さん女の人連れ込みましたか?」


ぎ、ぎくぅ!


「い、いやっ! そそそそそんなわけなかとたい!」


「なんですか? その方弁にその慌てよう。怪しいです! 明莉ちゃーん! お兄さんが女の人連れ込んでるー!」


えっ!? 嘘でしょ? 明莉も来んの? てか、なんで決定事項なの!? 間違ってないけどさ!

あっ、明莉がドタドタと音を立てて階段を駆け上がってきてる。どう言い訳をしようかな。


「ちょっと! お兄ちゃん! 女を連れ込んでるって本当なのっ!? 信じらんないっ!」


えぇ、俺も信じられませんよ。葵の鼻がこんなにも利くなんて思ってなかったんだもん。


・・・でもさ、これ、隠す必要なくない? なくなくなくない? だってどうせこのことだってバレるんだし今のうちに全部ゲロって説明すればいいんじゃないか? そしたら納得してくれるんじゃないか? ていうかそもそも2人に隠す必要なんて微塵もないんじゃないのか? ・・・よし! そうしよう。


「・・・実はこれにはふかーい事情があるんだ」


俺は出来るだけ真剣な表情と真剣な声を作り、正座をして2人を見上げる。2人も俺の雰囲気を感じ取ったのか静かになった。


「実はな? あの謎の生物に俺が連れて行かれた時があっただろ? あの時に俺はなんか変な力を手に入れたみたいなんだ」


俺の言葉を聞いて首を傾げる明莉と頷く葵。


「その力っつーのがな俺がハマっていたアルテミスオンラインっていうゲームの世界に順した能力なんだ。例えばゲームでガチャを引いてそのキャラを実体化させて戦える。みたいな」


ここで二人ともようやく話の内容を掴んできたみたいで頷きも多くなってきている。なんたって明莉も葵もアルテミスオンラインをやってるからな。


「それでだな。まぁ、見せた方が早いと思うが」


俺はそう言ってもう一度出撃のボタンを押してルルを呼び出す。


「支配人! 酷いじゃないですか! なんで寝てる人を無理やり撤退なんかさせるんですか!」


そう言いながらルルは葵と明莉の視線も気にせず俺の肩をポカポカと叩いている。地味に痛い。


「まぁ、こんな感じだ」


「えっ? この子ってチュートリアルの子だよね?」


「はい、確か名前は・・・ドライアドでしたっけ?」


葵がルルのデフォルト名を呼ぶとルルはピクンっと反応してクルッと葵の方を向いた。


「はい! そうなんです! ドライアドです! 支配人は全く覚えててくれなかったんですよ!」


そういいながら頬を膨らませてプンプンしているルル。いや、仕方ないじゃん。あの状態じゃ無理だって。


「あっ、ちなみに私は支配人と一緒に寝てただけですのでご安心を!」


全く安心出来ない言い方しやがる。それってあらぬ誤解を生み出しそうな言い方だもん。


「一緒に? 寝てた?」


ほらっ! また勘繰られてるじゃん!


「いや、なんか俺の能力のひとつでアルテミスオンラインのキャラが1人でも同じ世界で戦闘可能な状態なら俺は無敵っていう能力があって用心のために呼んだだけなんだ」


あっ、信じられてないな。葵も明莉も俺の事を疑いの目で見つめてきている。

でも確かに俺の言葉は訳が分からない。なんなの? 幼女と一緒にいれば無敵って。事案発生じゃん。


「ほんとです! 支配人は強いんです! 単体じゃ雑魚ですけど」


ルルが元気に俺の事を貶してくる。悲しい。


「まぁ、ルルちゃんがそういうなら私は信じます」


と葵。どうやら俺の言葉は信じてくれないらしい。今まで積み上げてきた信頼が一気に崩れ去ったな。


「どーでもいいんじゃない?」


と明莉。こいつはいつもと全く変わらんな。ある意味有難い。


「まぁ、とりあえずルル。俺と寝ると面倒なことが起こるって分かっただろ?」


「はい! 支配人がロリコンだと疑われるんですよね」


まぁ、それ以前に犯罪者だと疑われてるんですけどね。ルルの中でそうなんだったらそうなのだろう。わざわざ俺からその認識を植え付ける必要はない。


「だから葵か明莉と一緒の部屋で寝てきてね」


そしてしれーっとルルを葵と明莉に押し付ける俺。マジ畜生。いきなりの無茶ぶりに慌てふためく葵と明莉。何故か目をキラキラさせるルル。


「そうですね! 3人で一緒に寝ましょう!」


「うんうん、それがいいと思うよー。んじゃ、あとは3人でごゆっくりー!」


俺はそういいながらグイグイと3人を部屋から押し出す。二人ともなんか言いたそうだったけど無視だ。ルルは寝付きは良さそうだから睡眠不足になることはないだろう。んじゃ、俺も寝ますか。おやすみー。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


お兄ちゃんにルルちゃんを押し付けられた時はどうしようかと思ったけど意外となんとかなるものね。

結局あの後リビングで布団を川の字に並べてみんなで一緒に寝ることにした。左から順に私、ルルちゃん、葵ちゃんの順だ。

ルルちゃんは布団に潜るとすぐに寝ちゃった。


さてと、私は葵とすこし話さなきゃならないことがあるのよね。


「ねぇ、葵ちゃん。抜けがけは禁止だって約束したよね?」


私の声にピクっと反応する葵ちゃん。

そう、私達実は二人ともお兄ちゃんが大好きで恋をしてる。

私も葵ちゃんも方向性は違うにせよお兄ちゃん好みの女性になれるように必死に努力してきたのだ。


そんな私達がライバルの存在に気づいたのは私が中学に入った頃だった。その頃は私も葵ちゃんもお兄ちゃんにベッタリでちゃんと言葉で好きだとしきりに伝えていた。

まぁ、お兄ちゃんは全くそういう意味に捉えてなかったけど。


そんなモヤモヤを打ち消すために私は一世一代の大博打に出た。そう、夜這いだ。私はこっそりとお兄ちゃんの部屋に侵入するつもりだった。

でも、その前に出会ったのは私と同じ考えをしていた葵ちゃんだった。そこで私達は恋のライバルだって気づいた。


そして、そこからルールが決まるまでそう遅くはなかった。ルールと言っても簡単なものでお兄ちゃんに直接好きって言わないとか、夜這いしないとか、告白しないとか簡単なものだ。

そして、その中に抜けがけ禁止! っていうルールもあったのだ。出来るだけ同じ時間お兄ちゃんと一緒に居て、その結果どちらが選ばれるか平等にって約束してた。


だから、今回のルール破りは私にとっては到底許せるものではない。それと同時に私にとって最大のチャンスでもある。


「はい・・・悪かったと思っています」


「じゃあ、私が言いたいこと分かるよね?」


「・・・何日ですか?」


この何日ですか? っていうのはアピール禁止っていうペナルティの長さだ。もちろんそんな厳密なものじゃない。

お兄ちゃんからのものは避けなくてもいいし、わざとじゃなければ手が当たっちゃうのも許容範囲だ。


「1週間は欲しいな」


こういう交渉事の時はまず最初に大きな数字を出すのが鉄則!


「さ、流石にそれは多すぎます!」


「んー? でも夜這い+抜けがけだよ? そのぐらいあってもいいんじゃないかな?」


そして、そこに最もらしい言い分を付ける。


「で、でも! 1週間は!」


そして、相手を弱らせたところで一気にキメにかかる!


「・・・分かった。じゃあ5日。これでどう?」


「せめて3日に!」


「分かった。3日ね。それでいいよ。でもこれは貸しだからね」


「う、うぅ。分かりました」


葵ちゃんが負けを認めるようにゆっくりと頷く。


うん! 完璧っ! 3日ぐらいならお兄ちゃんも違和感ないだろうし、オマケに貸しも作れた!

この期間私がアピールしても葵ちゃんは何も邪魔出来ない! 葵ちゃん、悪いけどお兄ちゃんはもらったよ!

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この世界でのお米は異世界では世界樹の種でした!? ぼたんもちぃ @botanmochiiiii55

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