第6話 ヘラのお名前
「ひ、酷い目にあった」
俺は今、ばあちゃん家の2階の元ばあちゃんの部屋で寝っ転がっている。
俺はあのアルテミスオンラインに酷似した、いや、多分アルテミスオンラインの世界から帰ってきたあと、明莉と葵にボロっカスに怒られた。
今、頼れる人はこの3人しか居ないのに長い間あの世界にいたことを怒られた。ごもっともすぎて反論なんか出てくるはずもない。
明莉からの「だからお兄ちゃんは」とか「お兄ちゃんのこういう所が」という理不尽な攻撃にも耐えるしかなかった。
んー、寝る前のスマホって駄目らしいけどついつい触っちゃうよね。
ちなみにこの世界に転移してきても何やらインターネットは使えるみたいだ。でも、SNSとかは全く更新されてない。つまり、俺達が転移する前までのサイトは閲覧できるけどそれ以降の情報は入ってこないと。
あっ、ちなみにアプリゲームはアルテミスオンライン以外出来なかった。辛い。
まぁ、となるとやることはアルテミスオンラインしかないしやっておくか。
俺は何気なしにアルテミスオンラインを起動する。うん、なんの問題もなしに起動したな。
俺が拠点のページを開くと、そこには畑を一生懸命耕しているルルとその側でぼーっと座っているヘラが確認出来る。
おっ、ルルもちゃんと仕事してるじゃん。でも、ヘラは仕事がなくてぼんやりしてるな。
ん? ルルとヘラからビックリマークの吹き出しが出てるな。これは確かなにかイベントがある時のサインだ。ちなみにたまーに出てくるハートマークの吹き出しではキャラ達のデレたストーリーを見ることが出来る。
そうだな。せっかくだしタップして確認してみるか。まずは・・・まぁ、ヘラだな。ルルはとんでもないイベント引き起こしそう。
てことでヘラをタップ。
「あっ、支配人。こんばんわ」
俺がヘラをタップすると画面がヘラへとよる。そして、周りに色んなアイコンが出現。まぁ、今はあんまり関係ないのでスルーする。
「私、名前忘れてた。時間がある時でいいから付けて」
あっ・・・そう言えばデフォルトのまま出てきちゃったよなぁ。
「支配人? 聞こえてる? 聞こえてるなら返事して」
俺がなにも言わずにヘラの名前を考えていると少し頬を膨らましたヘラが不満げにそういった。
「えっ? こっちの声ってそっちに伝わってるの?」
「うん、伝わってる。だから無視されてると思った」
おうふ、そんなことルルから全く聞いてないぞ?
「ゴメンな。で、名前だっけ?」
「うん」
確かアルテミスオンライン上では『チヨメ』って名前を付けてたっけ。なにせ衣装がくノ一っぽいからね。黒髪のボブの女の子だ。
闇属性の前衛キャラで、ターゲット(攻撃の狙い)を指定したキャラへと移すことが出来る効果を持っている。またタンクへと攻撃を誘導したり、仲間の攻撃に乗じて攻撃してくれたりかなり有能なキャラだ。
またスキルはほとんどが毒にまつわるもので、スキル1が常時発動のパッシブスキルで攻撃に毒を10ポイント蓄積させるっていう効果だ。
ヘラ自体が素早いキャラでもあるのでかなりの速さで毒が入っていく。また、毒は敵の防御力を無視してダメージを与えるので硬い敵にもダメージが入りやすい。
そして、スキル2。これはアクティブスキル、つまり自分で発動するスキルで相手全体に毒弱体効果を付与する。これを付与されたキャラへの毒のダメージは2倍になる。さらに重ねがけ可能。
また、このスキル発動後3回、このキャラ以外のもっとも耐久の高いキャラにターゲットを移す。
最後はスキル3。これはパッシブスキル。高確率で味方の攻撃に乗じて攻撃する。その際の毒の蓄積量は3倍になる。
まぁ総評としては紙耐久、全体攻撃がないというのが少し欠点となるが、それ以外は極めて優秀なキャラ。また、毒主体のキャラの中ではトップをはれる実力を持つって感じかな。
あ、あと、今の状態だと味方がルルしかいないから後衛を守りきれないって言うのも欠点か。
もうそんな具合で忍者にしか見えなかった。だから有名なくノ一の名前を取ってチヨメと付けたのだが、今回もそれでいいと思う。意外と気に入ってたし。
「じゃあ、チヨメとかはどう?」
「・・・」
あっ、顎に手を当てて考え出しちゃった。
ヘラは5分ほどじっくり考え抜いたすえ、口を開いた。
「うん、合格。これから私はチヨメ。よろしく」
ふぅ、良かった。てか、不合格だったらどうなってたんだろ。
「うん、よろしくね」
「なにか仕事ない? 暇」
まぁ、暇だよね。ずっとぽけーっとしてたもんね。
「じゃあ漁港を建設してくれる?」
アルテミスオンラインでも畑の次は漁港だったからな。順序は間違っていないはずだ。
「うん、分かった。頑張る」
チヨメは両方の手をぐっと握りしめてやる気をあらわにする。
俺が「じゃあね」と挨拶をしてくねっと曲がっている矢印ボタンを押すと、チヨメへのズームが解除され、また拠点全体を移すようになる。
「はぁ、次はルルかぁ」
俺はため息をつきながらルルをタップした。
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