第5話 あれ? なんか似てる・・・
この世界に入り込んだ時から気になっていたあのでっかい木についてルルが説明してくれるそうだ。
「あれはですね。世界樹っていう木なんですよ!」
せ、世界樹かぁ。また大きく出たもんで。
「あの木は毎日たっくさんの種をばら撒くんです。ほらっ! あそこに沢山種がなってるでしょう?」
ん? んー? ・・・全く見えない。さすがに視力がギリギリの1.0の俺にはいささか厳しい。
「もう! 仕方がないですね。それじゃあそのスマホの画面で世界樹を選択してください」
なんで怒られてるのか全く分からないが言われるがまま世界樹と思わしき部分をタッチする。するとゲームと同じようにたくさんの選択肢が現れる。移動させるとか、撤去するとか、レベルアップさせるとか。あれ? この移動ってなんだ?
「それでですね。次はこの移動って書いてあるのをタップしてください!」
んー、なんか嫌な予感するけどいいや。タップしてしまおう。
「うおっ!」
俺が移動のボタンをタップすると突然光に包まれた。そして2、3秒たつと目の前には見たこともないほどでっかい木があった。
その木を見上げてみると、なるほど確かに黄色い大きな俵型の実が沢山なっている。
「これがこの世界の支配人の能力。ワープです! 任意の位置に任意のキャラクターと共に飛ぶことが出来るんです!」
なんでルルは俺の能力を説明してるのにドヤ顔してるんだろうか。まぁ可愛いからいっか。
てか、俺にはその前に気になることがあるんだ。
「それで、あの種もうすぐ落ちそうなんだけど俺たち大丈夫なの?」
黄色い俵型の実が風にフラフラと揺られて今にも落ちてきそうで結構怖い。かなりの高さがあるから一応避けることは出来ると思うのだが、もし当たったりしたら目も当てられない。
「え、えーとですねぇ。一応支配人は私たちが全員倒れるまでダメージを一切受けないというスキルがあるんです」
ほうほう。なら俺は安全だということだな。
「で、ですけど。私は紙耐久なのであれが落ちてくると一溜りもありません」
う、うん。あとさ、なんか揺れてる種が多くなってきてない? 俺の気のせい?
「で、ですね。私も痛いのは嫌なんで・・・」
あっ、種が落ちてきた・・・
「は、速く移動してくださいっ!!!!」
い、いや! そんなこと早く言ってよ! え、えっと? どこに飛べば!?
「どこでもいいですから! 早く!」
「あ、あわわわわ!」
え、えーいっ! 畑でいいや! ポチッとな!
俺が畑へ移動のボタンを押すとまたもや光に包まれた。その後、光が消えるとトマトの苗が植えられた畑が目の前に現れる。
てか、ワープの瞬間なんかが頭に当たった気がするけど大丈夫かな?
「あ、危なかったですね! さっすがわたし! 危険な状況でも冷静な判断が出来てましたね!」
だからなんでルルはこんなに得意気なんだ? 今の事故もほとんどルルのせいって言っても過言じゃないからな。
「あっ、支配人! 頭に世界樹の種がついてますよ!」
やっぱり俺が転移する瞬間に俺の頭にぶつかってたんだな。まぁ、怪我とか一切ないからいいけどさ。
そう言ってルルが見せてくれた種をみて俺は目を疑った。
「・・・えーっと。ルル? これってお米じゃない?」
「お米? なんですか? それ。これは世界樹の種ですよ! これを使えば私たちのステータス値の限界を突破させることが出来て、尚且つその分だけステータスが上がる最強のアイテムなんです!」
あーー、そういやあったなぁ。そんなアイテム。確かに運営がネタとしてお米の形にしたって話も聞いたことあるな。そのせいで田んぼっていう施設を実装出来なかったって。
でも、世界樹の種なんてレアなアイテム俺が覚えてるわけがない。だってイベントで1位を取らないと入手できないアイテムなんだぞ!? 俺も頑張ってたけどせいぜいが3桁止まりだった。学生で部活やってたらそんぐらいだよね。
ん? 待てよ? でも、木に実ってた種は黄色かったし俵型だったよね? てことは、えーっと・・・そんなアイテムが米俵並に落ちてきてるってことか? やばくね?
「んで、これが毎日あの量落ちてくるのか?」
「はいっ! 凄いでしょ!」
いや、凄いもなにもチートじゃん。普通にチートじゃん? ヤバすぎるでしょ。
俺があまりの自体に呆然としているとルルがウンウンと唸り始めた。
「うーん、なんか支配人のご家族が騒いでますねぇ。そろそろ帰った方が良さそうです!
では支配人! 最後にガチャを引きましょう! 普段は魔物を倒すと手に入る魔石が100こ必要なんですが、今日は私が用意しておきました! では行きましょう!」
えっ? 現実ではそんなに時間が経ってるの? あっ、あと試したいことがある!
「先に世界樹の種をいくつか回収しに行ってもいい?」
「えっ? あぁ、世界樹の種ならちゃんと保管庫に保管されてますよ! 畑などで取れた生産物も自動で保管されます! それもスマホからどこでも取り出せるんで大丈夫です! それより早くガチャしにいきましょう!」
うわぁ、なんだこのチート。異世界転移ってすげぇな。
俺がルルについてやってきたのは家の隣にある少し小さめの泉の前だ。泉の真ん中には何らかの力で真っ青な宝石が宙に浮いている。
「では、どうぞ! これが魔石です!」
そう言うとルルは俺にたくさんの綺麗な石が入った袋を渡してきた。色とりどりの半透明な石だ。
「魔石の質や種類によって召喚出来るキャラは変わりますが、まぁ大体は運ですね! 頑張ってください! あっ、ガチャが2回まで引き直せるのはゲームと同じですね! 引き直したい時はそう叫んでください」
あっ、でた良心的な設定! ほんとこれはありがてぇなぁ。
「では、魔石を袋から出して泉にはぶちまけちゃってください!」
「お、おう!」
うわぁー、なんか緊張するなぁ。初めてのガチャでもこんなに緊張しなかったぞ!
俺は震える手で一つ一つ魔石を泉に投げ入れる。
俺が100個全て投げいれ終わるといきなり泉に無数の雷が落ち始める。そして、真ん中に浮いている石が虹色に光輝く。
おっ! これってもしかして! 確定演出!? てか、こんな所でもゲームに忠実なんだなぁ。
やがて泉が尋常ではない程の光が溢れ出す。そして、その光が去りきる前に何やら聞きなれた声が・・・
「どーもー! 初めまして!! アルテミスです! キラっ!」
「えー、引き直し!」
「えっ!? ちょっと!? えっ!?」
おっ! また、確定演出だぁ! やったぁ!
「どーもー! 初めまして!! アルテミ」
「引き直し!」
ワー、ヤッタァカクテイエンシュツダァ
「・・・初めまして、私、ヘラ。あの神様のヘラとは関係ないよ。よろしく。」
「おーーっ! よっしゃぁぁ!」
最初の2回はなかったんだ。いいね? アルテミスってほんと。あれだから。ほんと。
それに対してヘラはかなり有能で可愛い! 前衛キャラでもリセマラランキングの上の方に来てたキャラだ。クエストの中にはヘラが居ないとクリア出来ないってクエストもあったほどだ。
「よ、よろしく。俺は」
「知ってる。支配人でしょ? これから私はあなたのもの。任せて」
まぁ、こんなふうにちょっとクールだけどやることはやってくれる頼れるキャラなのだ!
「さてと、ガチャも終わったし明莉と葵の元に戻るね」
「はい! 私達は基本この世界にいますがたまには外の世界にも呼び出してくださいね! ご家族様にもよろしくお願いします!」
「またね」
俺はそんな2人の挨拶を受けて祖父母の家へと戻って行った。
「行っちゃいましたね」
「うん、でも支配人はまた戻ってくる。それまで我慢。・・・あっ、名前。忘れてた」
「あっ、ほんとですね。
うーん、それじゃあ寝込みを襲いましょうか!」
「賛成。サプライズ」
「はい! サプライズです!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます