第3話

でも、仁のところに行けないし、行けたところでこの状況から逃げてるだけ。





「自分の気持ちが、分からない…っ」


揺らぐ気持ちも、




「うまくいかない、っ!」


荒ぶる気持ちも、




「…はぁ、どうしよう」


蠢めく想いも




「やっぱり…好きっ」


溢れ出す想いでさえも、きっとこれは







尚也への想いなのかもしれない______







やっと気がついた、のか。

ただ自分の気持ちに嘘をついていただけなのか。


それがまだ、はっきりしない。


でも、心が痛くなる原因も、私が幸せに感じる時にいつも居る人は

尚也、なんだ。


今さら気づいたこの気持ち。

遅すぎ、か。







「おはようございます、先輩」


「…おはよ、昨日はごめんね」


「いえ、大丈夫です」




やけに敬語で、真面目な顔で話す尚也はなんだか変で。




「今日、一緒に帰ろ_____」


「今日、無理です。すみません」


「…そっか」




泣きそうなくらい辛いこの空気を遮るように、可愛らしい声が廊下に響いた。





「尚也くん、おはよ!」


「あ、おはよ。今日は髪結んでないんだね」


「うん、寝坊しちゃって…、」


「似合ってるよ、その髪型」




尚也と同級生の女の子が楽しそうに話していて、

ここにいるのが嫌で嫌で、


「バイバイ」


そう言って、別れを告げた。


でも尚也はその女の子との会話に夢中で、私の方を向いてくれなかった。

本当、辛い。







「あ、ゆずかちゃん」


「…裕翔先輩」


「どうしたの?そんな暗い顔して」





ふと廊下ですれ違った裕翔先輩が話しかけてきた。


裕翔先輩は、尚也とは違って些細なことでもわかってくれる。

あぁ、こんなことで気持ちが揺らぐなんて…私って変かな?




「…なんでもないです」


「嘘だ、だって後ろ_____」



私の後ろを見た先輩が、すぐに私の目を手で塞ぎ



「後ろ、向いちゃダメ」



そう言った。



でも、


「え、なんでですかっ?」


言うことを聞かなかった私は、呆然とした。






この何人もの人が行き来する、学校の廊下で







尚也と女の子がキスしていた。




もちろん、廊下を歩いている生徒は何人もいる。


呆然としている尚也に、

背伸びをしてキスしている女の子、

なんだか騒がしい生徒たち。






「…ゆずかちゃん、今日一緒に帰ろっか」



私の返事も聞かないまま、裕翔先輩は「決ーまり」と言って、

私の耳元でこう囁いた。







「あっちが公開キスしてるなら、俺らもやらない?」






それは本当に一瞬のこと。




生暖かくて柔らかいものが、私の唇に触れた。


そして目の前には…裕翔先輩の顔。




そう、公開キス…無理やりされちゃいました。

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からめた指が運命のように ゆずか @loveyoufor

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