第2話

「先輩、何食べます?」


「んー、イチゴクレープかな…。尚也は?」


「じゃあ、僕はチョコバナナクレープ頼むんで、半分こしましょ!」



尚也は一体、反抗期なんて来ているのだろうか。

半分こ、なんてワード久しぶりに聞いた気分。

少し胸が高鳴った、でも本当に一瞬のことで。


それはきっと、尚也が後輩だから。


私のタイプは断然、年上で大人な人。

それに比べて尚也は、年下で子供っぽくて可愛いけれど、タイプでない。



「うわぁ、美味しそうですね!」


「だね!」


2人揃ってパクリとクレープを頬張る。


「ん〜、美味しい!」


「先輩、口元に生クリームついてますよ」



必ずあるシュチュエーションが、今この場で起こっている。

慌てて口を拭くも、取れていないと笑う尚也。



「ここ、ですよ」



さっと、私の口元についていただろう生クリームを指ですくい

ペロリと自分で食べた尚也。

っ、自分でも分かるくらい顔に熱が集まった。



「…ゆずかちゃん?」



ふと自分の名前を呼ばれ、視線のする方を見ると



「あ…」


「偶然だぁ〜」


「誰、この人」


そう聞く尚也に、



「高橋裕翔ゆうと先輩。委員会が一緒で」



と言うと



「ふ〜ん」



と明らかにつまらなそうな顔をする尚也に、裕翔先輩は


「ゆずかちゃんの、彼氏?」


と少しおちょくるようにそう言った。



「違いますけど」



少し胸が痛くなって、なんか悲しくなって



「ですよ、付き合ってません」


笑いながら誤魔化しては、辛くなる。

この気持ち、変。





キャラメルマキアートみたいに甘くていい香りがふとして、

その時にはもう分かった。



…裕翔先輩に抱きしめられてるって。




「は、」


唖然とする尚也に



「先輩、?」


困惑する私。


そんな私、いや尚也に先輩はこう言った。




「ゆずかちゃん、奪っちゃうよ?」


「何、言ってるんですか」


「だって、付き合ってないんでしょ?もしかして、好きなの?」


「別に。勝手にしてください」




その言葉が痛いほど、心にぐさりと刺さって。

嫌なほど、心に響いて。




「っ…」




自分でも気がつかないうちに、涙が出ていた。

でも、泣いてるなんて尚也に見られたくなくて。



「もう、帰るねっ」



裕翔先輩の腕をすり抜けて、バックを手に走って

溢れる涙を制服の袖で拭って、シミになるまで泣き続けた。



尚也の声がしたけど、もう止まれないことは私が1番知ってる。

だから、もう振り向けなくて。




「裕翔先輩のバカっ」




初めて、先輩を恨んだ。


きっとそれは、尚也の方が…大切だったから。


裕翔先輩に、嫌われちゃうな。


もう、あの2人に関わらないようにしなきゃ。




クレープ半分こできなかったな、って思ったりして。



「はぁ…」





力なく吐かれた吐息は、すぐに消えていって

ポロリと涙腺に生暖かいものが伝った。






まだ、仁のこと好きなのかな…私。

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