長い長い長い小説

 長い長い長い小説を読んでいる

 ギネスブックに載るくらいの長さ

 サロンの会話がいつまでもいつまでも続き

 嫉妬の考察がいつまでもいつまでも続く

 心理の機微にどこまでもどこまでも分け入っていき

 恋愛の不毛がどこまでもどこまでもついてまわる

 そして音楽、音楽の描写

 素晴らしく精緻な音楽の描写

 長くて長くて長くて長くて

 休日の朝に読み始めて

 夕暮れになってもまだ終わらない

 そのよろこび

 半分読むのに数年ついやしたのに

 残りの半分は一週間ほど

 もうすぐ終わる

 終わってしまう

 長い長い長い小説

 百年前に死んだ作者が

 もうすぐ死ぬような淡い哀しみ

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