十二の理由

 死にたいと

 そればかり書いてしまうのは

 どういうつもりなのだろう

 客観的にいえば

 死にたいなら

 死ねばいい

 書く必要なんてない

 書く暇があるなら死ねばいい

 死にたいと

 書いている時点で

 自己欺瞞は免れない

 なぜ死にたいと

 書き続けてしまうのだろう


 思いつくままに

 理由を箇条書きにしてみよう


 ①本当は死にたくない

 ②憐れみを乞おうとしている

 ③自己憐憫ごっこ

 ④死ぬかどうか迷っている

 ⑤フィクションとしての自殺を楽しんでいる

 ⑥死ぬ時機を待つあいだの暇つぶし

 ⑦死にたがっている人へのメッセージ

 ⑧死んでしまった人へのシンパシー

 ⑨まるっきりの嘘

 ⑩死ねない自分を鼓舞している

 ⑪死なない自分を嗤っている

 ⑫書かざるを得ない


 思いつくままに

 書いてみた

 十二使徒にちなんで

 十二の理由

 理由になっているだろうか

 真実は含まれているだろうか

 ユダのような背信者ばかりだろうか

 理由が重複している気がする

 説明にもなっていない

 こんなものを書いても死ねはしない

 死にたいと書き続けても

 死ねはしない

 とはいえいつかは

 必ず死ぬ

 それだけは確かだ

 書こうが書くまいが

 それだけは確かだ

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