愁嘆場

 この国の映画やドラマには

 たびたび愁嘆場が訪れる

 みんなうつむき深刻で

 涙を浮かべたり嗚咽をもらしたり

 その場の人物全員が一色に染まる


 その空気が

 死ぬほど嫌いなので

 かまわずに遊ぶ子どもや動物を

 愁嘆場に放り込みたくなる

 個人の哀しみには敬意を持つけれど

 同調圧力に満ちた哀しみは

 情緒に対する犯罪だと思う

 無関心をごまかす涙は

 どぶよりも濁って汚くみえる

 自分も流したことがあるだけに

 余計にそう思う

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