魚のストレス

 水槽の外を

 泳ぐように歩く人びと

 それは彼岸の亡者たち

 境界の外側の天使たち


 この蒼い小宇宙は

 四隅まで憂鬱が満ちている

 視界は常に溶けている

 情緒は常に浮いている


 透けた外壁を

 時おりだれかが叩く

 水のかすかな震動

 他者の気まぐれな訪れ


 その優しい手で

 ガラスを砕いてはくれないだろうか

 渇きにのたうちまわりながら

 涙を流して死に感謝するのに

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る