禁忌の魔術。

なぜ禁忌か?

過去に行くことは良くないから。

そんな道徳心から生まれた様な考えで禁忌となった。

しかし、もし世界にこの術式のやり方が蔓延したとして大魔術師一生分の魔力と最低300年を費やして、やっと数ヶ月戻ることしかできないということであまり禁忌にする必要もないのかも知れない。


「で、この地下の最深部にあると?」

「あぁ、ロンメル王家直属の大魔術師が数名人生を掛けて作った術式だ。いずれこの国を襲うであろう災難を乗り越えるために。」

レヴァンドフスキの説明にルージュが続く。

「それは間違いなく今だよねって話で使用することが決定したの」


着いたぞと言われて見渡した場所は暗くジメジメとした場所で地面には大きな魔法陣があった。

「あとはここに少し魔力を流すだけで作動する。っと、その前に君。ラングハールと一緒に来て欲しい場所がある。」

レヴァンドフスキに先導され向かった場所は地下最深部の片隅

そこにも別の魔法陣が存在していた。

「歴史の話を省く。その前にここも魔法陣で君の体により効率よく魔力回路を作る。」

トンチンカンといった顔をしている俺にレヴァンドフスキは説明をする。


この世界のほとんどの人間が魔力回路を持っている。それには大なり小なり 人により大きく異なるみたいだ。

こちらの世界でいう運動神経といったところか。故に扱う魔法にも得意不得意が関係してくるらしい。

俺の刀は異常な魔力を発しており、その魔力を体に流す回路を持つのは向こうの世界から来た俺しかない特殊なものらしい。

「で、もっと俺が強くなるために魔力回路を大きくすると?」

「あぁ、そういうことだ。ただ激痛はすごいぞ。全身の血管を広げられてるような痛みらしい。どうだ?いけるか?」

「今まで全身の血管を広げられた経験なんてねぇよ。なけりゃ怖くもねぇ。やれよ」

じゃあ頼む とレヴァンドフスキはラングハールにアイコンタクトをする。

ラングハールは一歩俺の前に出て長い杖を上にかざす。

数分後、俺に襲った痛みは多分 後にも先にも味わうことのない激痛だった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


眼が覚めると、そこは寝室だった。

ラングハールさんがうつらうつらと横の椅子で寝ている。

「ラングハールさん。ここ、もう?」

ハッと起きてまず痛めた事を謝り その後、顔を上げてしっかりという。

「はい。一年前のメルセイです。」

メルセイはさっきまでいた都市の名前だ。

要するに過去に行ったと。

「あんたが気絶して起きないからもうパパッと行ったのよ」

フィーリアが扉を開けながら入ってくる。

「ごめんね。起こしてから行こうと行ったのにフィーリアちゃん勝手に魔力流しちゃうんだもん。」とルージュが後ろから顔出す。

「俺が起きたら入ってくるとは、実はフィーリア 俺のことを気にしていたな?」少し茶化す。フィーリアは顔を真っ赤にして俺に襲いかかろうとするが、後ろからルージュが羽交い締めにして抑える。

なんだか、家での暮らしを思い出して胸が少し痛んだ。

あの悲劇を忘れるように忙しく生きていたが、まだ処理しきれていないみたいだ。



「とりあえず、第1段階は終了だ。数日後にはここでて魔王の封印されている城に向かう。みな覚悟しといてくれ。」

部屋の隅で本を読んでいたレヴァンドフスキが言う。


「「「「了解」」」」

と俺らは口を揃えて答える。

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